わが国における農耕域と野獣域との境界・猪垣に関する研究
Project/Area Number |
01580238
|
Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Bunkyo University |
Principal Investigator |
矢ヶ崎 孝雄 文教大学, 教育学部, 教授 (10019375)
|
Project Period (FY) |
1989
|
Project Status |
Completed (Fiscal Year 1989)
|
Keywords | イノシシ / 猪垣(ししがき) / 猪害 / トタン柵 / 電気柵 / 野獣 |
Research Abstract |
本年度は栃木・岐阜・奈良県等での資料収集のほか、長崎・宮崎・沖縄の3県を重点的に調査した。各地域それぞれに猪害・猪垣には特色があり、現地調査の重要性を切に感じた。 長崎県下では、とくに西彼杵半島において、猪垣が馬蹄形に設置されていた点を明らかにできた。これは甘藷耕作の進展とも関係があるようにみられ、猪垣が人間と野獣との居住界をなす典型的な1事例とみられた。ところが、現在はその境を越えて獣域に開拓民が入り込み、人間が居住域を拡げてきている。しかし、最近は水田等の耕作放棄もあり、農業への意欲も減じたこともあり、猪害の防除にさしたる対応もみられない地域もある。 沖縄県では、猪垣は本島北半部に著しいほか、西表島・石垣島にもあったという。本島北半部では平地に乏しく、かつては人口圧もあって耕地が海岸の平地から山腹へ、段畑を築いて拡がり、猪垣はその上縁に設けられた。各集落民に猪垣の設置と修理とが割り当てられ、連続した猪垣が山地内に本島を囲繞して設けられていたようである。その維持管理の組織は極めて厳格に整い、農民の負担も大きいものであったが、生命線として欠かせないものであった。その記録はいまも国頭村奥において残され、親しく調査できた。しかし、ここでは過疎化の進展により段畑が放棄され、昭和34年にこの組織を解散した。山地は獣域に戻り、平地のさとうきび畑ではトタン柵で猪を防止している。 宮崎県下では山地においては猪の狩猟が盛んで、神楽に猪狩の神事がみられることから、狩で対応していたようである。平地の北浦町では石垣、都城市ではトタン柵・電気柵で防除し、地域的特色が著しい。 猪垣の研究については、全国的に綿密な調査の必要性を強く感じている。
|
Report
(1 results)
Research Products
(2 results)