Research Abstract |
目的: 高齢者を対象とし,歯周疾患の発症または進行に対するリスク要因を,全身機能も踏まえ,明らかにすることを目的としている。 方法: 73歳600名を対象に調査を行った。診査項目は,(1)口腔診査(口腔粘膜,歯周組織,歯,補綴状況,顎関節,咬合,咀嚼能力,唾液,口腔細菌),(2)栄養調査,(3)体力(身長,体重,身体活動性,握力,脚伸展力,脚伸展パワー,ステッピング回数,開眼片足立ち時間),(4)血液検査(総タンパク,アルブミン,GOT,GPT,γ-GPT,クレアチニン,総コレステロール,中性脂肪,カルシウム,無機リン,血糖,IgG,IgA,IgM,RF),(5)骨密度,(6)尿検査,(7)意識調査(社会要因,身体的不調,保健行動)である。3年間の歯周疾患進行に対するリスク要因を解析した。 結果および考察: FcγRIIIb-NA1/NA2遺伝子型分布による,3年間のAdditional attachment lossを喫煙経験も踏まえて評価した。その結果,NA1NA2またはNA2NA2型の遺伝子多型を持っている人はNA1NA1型の遺伝子多型を持っている人と比較し,3mm以上のAdditional attachment lossを持つ人の割合が有意に高かった。特に喫煙者においてその割合は高かった。また,踵骨における骨密度が低い人には3mm以上のAdditional attachment lossを持つ人の割合が有意に高いことも確認した。さらに,血清中ビタミンC濃度とAttachment loss levelとの関連を評価した。ビタミンC濃度とAttachment loss levelの相関係数は-0.2(p<0.00005)であった。さらに,他の要因の影響を調整するために重回帰分析を用いた。その際,独立変数としてAttachment loss levelを,従属変数として血清中ビタミンC濃度,喫煙状態,糖尿病の有無,性別,1日あたりのブラッシング回数,現在歯数を設定した。その結果,血清中ビタミンC濃度は統計学的に有意にAttachment loss levelに関連していた(correlation coefficient=-0.04;p<0.05)。寄与率は26%であった。このことは,血清中ビタミンC濃度が歯周疾患進行のリスク要因となっていることを示唆している。 これらの調査結果については,平成14年度年新潟歯学会第2回例会(2002年11月),および第81回International Association for Dental Research(2003年7月)において発表した。
|