Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
採用最終年度となる本年度は以下の四つの課題に主に取り組み、研究を総括した。(1)フラーレンC_<60>並びにC_<70>と両親媒性脂質のコンポジット薄膜を基板上へ作製し、水中における還元挙動について様々な電気化学的手法及び化学的還元により比較検討した。フラーレン薄膜の水中における還元挙動は、マトリックスとしてカチオン性脂質薄膜を用いた場合のみ特異的に観測でき、フラーレン還元体の対カチオンとして脂質マトリックスのカチオン部位がその働きを担っていることを立証した。この結果は、国際学会proceedings(Fullerenes)に発表し、現在論文投稿中。(2)上記カオチン性脂質をπ-共役系色素分子であるフタロシアニンに応用した。ダブルデッカー型ルテシウムフタロシアニンとカチオン性脂質コンポジット薄膜修飾電極において、実験的に初めて第五還元波の観測に成功し、その特異な電気化学挙動に関して熱力学的に検討した。さらに、有機溶媒均一系における電気化学特性、スペクトル特性との比較検討も行い、本系のエレクトロクロミックデバイスへの応用の可能性を見出した。この結果は、Journal of Porphyrins and Phthalocyanines及びJournal of Physical Chemistry Bに発表。(3)脂質薄膜マトリックスを金属錯体へ応用した(有機・無機ハイブリッド薄膜)。ルテニウムニ核錯体と脂質マトリックスコンポジット薄膜系において、錯体由来の電子移動特性の観測、脂質二分子膜相転移による電子移動反応制御、一酸化炭素分子との結合特性などを詳細に明らかにした。この結果の一部はElectrochemical and Solid-State Lettersへ発表し、更に現在論文投稿中。(4)昨年度7月から本年度5月まで、英国オックスフォード大学のHarry Anderson研究室へ渡航し、電極上へ自己組織化可能なポルフィリンオリゴマーの合成、表面機能評価などを行った。分子設計の再検討が必要であったが、得られた知見を活かし、本年度10月より岡崎分子科学研究所の小川研究室において、二次元組織化ポルフィリンオリゴマーに関する研究に取り組んだ。これは構造規制された様々な分子の単一分子導電性観測を目指した研究の一環である。以上、採用期間において展開した研究で得た知見より、新規ナノスケール分子デバイスの構築への一指針を提案できたものと考える。
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