Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
共生アリに巣場所と食べ物を提供する代わりに、食植者から自身を守ってもらっている植物を、アリ植物と呼ぶ。このようなアリ植物であるオオバギ4種は同所的に生息しているが、各種に特殊化したアリのみと相利共生関係にある。このような両種間の特異性は、どのように維持されているのか。オオバギ実生に新女王が営巣することで共生関係が開始するため、各種オオバギ実生から抽出した化学成分を分析し、化学成分と新女王を用いた選好性実験を行った。その結果、両種の特異性維持機構に、オオバギ実生上の化学成分が重要であることが示された。さらに、このような両種間の特異性の維持に、どのような生態学的機構が働いているのかを明らかにした。まず、オオバギ実生(および新女王)の出現時期が各種で異なるために時間的な棲み分けがおこり、種の組み合わせの特異性が維持されているという仮説を立てた。野外の実生を採集して営巣している新女王種を同定するといった手法で、定期的な野外調査を行ったところ、この仮説は支持されなかった。しかし、新女王によるオオバギ種の選好性が明らかとなった。その一方で、本来の共生相手でないオオバギ種の実生にも、少数の新女王が営巣していることも明らかとなった。この事実は、両種の特異性維持機構が、新女王による実生の選択のみでは、十分ではないことを示している。そこで次に、新女王を様々なオオバギ種の実生に定着させる"新女王入れ替え実験"を行った。その結果、ワーカー産出成功率、アリコロニー維持率ともに、本来の組み合わせのほうが高かった。さらに、これらの株を野外に移植した結果、本来の組み合わせの株のみ、一年以上生存できることが分かった。これらの結果から、オオバギとアリの種特異性の維持機構として、複数の機構が順を追って機能している事が示唆された。
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