Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
新しい電子材料への応用を目的として、電子供与性のジチアフルベンやチオケテン二量体ユニットを主鎖に持つπ共役ポリマーもしくはオリゴマーを合成し、それらの性質を比較、検討した。様々な鎖長を有するオリゴエチレンオキシド基を側鎖に持つ1,4-ジエチニルベンゼンを新しく合成した。これをモノマーとして、系中で調整されるチオケテンの環化付加反応を用いて主鎖にジチアフルベン構造を持つπ共役ポリマーの合成を試みた。鎖長の変化により、得られるポリジチアフルベンの溶解性に違いが見られ、UV測定による吸収極大の値にも大きな影響を与えた。これは側鎖のセグメント長によってポリジチアフルベンの物性に影響が与えられることを示している。また、チオケテンの環化二量化反応を用いて主鎖にチオケテン量体構造を有するπ共役ポリマー合成も行った。このポリマーはチオケテン二量体構造を含む最初の高分子である。その酸化電位の測定をCVを使って行った結果、予想よりも低い酸化電位(E_<pa>=0.39、0.90V)を示し、このポリマーが上述のポリジチアフルベンよりも強い電子供与体として働くことが明らかになった。そのためにこのポリマーは有機電子受容体とかなり強く相互作用し、得られた電荷移動錯体は比較的高い導電性を示した。テトラチアフルバレン(TTF)-オリゴエチレンオキシドユニット-長鎖アルキル基を持つオリゴマーを合成し、その性質について検討を行った。この化合物のクロロホルム溶液に電子受容性のDDQを加えるとTTF-DDQ電荷移動相互作用に由来する吸収があらわれ、色が黒色へと変化した。この溶液の近赤外における吸収スペクトルを測定すると、TTF-DDQが固体状態でスタッキングしていることを示すスペクトルが得られた。また、重クロロホルム中での1H NMR測定を行うと、DDQを加えた後のTTFのピークが完全にブロード化し、オリゴエチレンオキシド部位もややブロード化したピークが確認された。これらの結果はTTF-DDQの電荷移動相互作用によって、オリゴマーがミセルのような凝集体を形成していることを示唆している。
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