Budget Amount *help |
¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
Fiscal Year 2003: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2002: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2001: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
|
Research Abstract |
視覚的注意は,視覚的気づき(awareness)ないし意識にアプローチするための重要な手掛かりとして、多くの研究が行なわれている。その本質は「意識の焦点化と集中」であり、同時に存在する多くの認識や思考対象の中から、特定のものを鮮明にとらえるための選択機能のことを意味する。視覚的注意を定量的に実験するための主要な精神物理学的手法に視覚的探索がある. ところで,視覚探索課題を用いた多くの研究では,'目標刺激の検出成績を規定する要因が,一提示画面内で議論されてきた.しかし,これらの実験では通常,被験者に数十から数百にわたる課題試行を連続して遂行させるため,前後の試行に対する記憶ないし期待が課題成績に影響を及ぼす可能性が考えられる.事実,ポップ・アウト(pop-out)と呼ばれる視覚探索課題では,既に修了した試行の知覚過程の履歴効果を受けることが報告されており(ポップアウト・プライミング),その影響は直前の試行ばかりでなく,5から10試行前からも持続している可能性が示唆されている.しかし被験者は,顕在的には1試行前に提示された刺激しか想起できない. 卒業研究より続く一連の研究では,Memory Kernel Analysisと呼ばれる統計手法を用いて,上記のポップアウト・プライミングが一種の潜在的な短期記憶に媒介されており,過去5から10試行分という数字はそこに保持可能な目標刺激事象数に相当することを明らかにした.また,この記憶表象は被験者の眼球運動によって消滅しない等,高次視覚の情報処理特性と考えられている特徴を複数有していることを示した.さらに,従来ある種のプライミング効果に欠如が報告されてきた高齢者群においても,ポップアウト・プライミングは観察され,記憶保持容量も変化が少ないことを発見した.今年度は,この研究発表の論文を心理学研究誌に受理された.また同様の研究の追加実験をPerception & Psychophysics誌に投稿し,現在審査中である. また,これらの行動実験から導き出された幾つかの仮説を直接検討するために,近年進展著しい脳機能イメージング法を用い,ポップアウト・プライミング等の視覚的注意と視覚的短期記憶の関連を示す幾つかの知見を検討した.現在ほぼ全ての実験を終了し,データ解析を続行中である.結果の一部は,2003年のVision Sciences Society, European Conference on Visual Perceptionで発表予定した.
|