Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
これまでに、carfentanilを親化合物として、構造-活性相関に関する考察をもとにその構造を様々に改変させた化合物を設計・合成し、クローン化オピオイド受容体発現細胞株を用いて受容体結合特性の評価を行うことで、μ-オピオイド受容体に対して高選択性を有する化合物を数種見いだしてきた。さらに、受容体発現細胞株を用いた実験によりこれら化合物が受容体作動薬として機能することも明らかにしてきた。本年度はこれら化合物のうち最もμ-オピオイド受容体選択性の高い化合物であるK-8の薬理作用を個体レベルで検討した。Tail-pinch法およびフォルマリン法により、それぞれ、機械的および化学的侵害刺激を与え、侵害受容反応に対するK-8およびモルヒネ、フェンタニルの皮下投与による効果を比較検討した。これらの薬物は、いずれの侵害刺激に対しても鎮痛効果を示し、その作用の強さはフェンタニル>K-8>モルヒネの順であった。また、μ-オピオイド受容体のより詳細な個体レベルでの機能解析を行うために、ノルアドレナリン・アドレナリン神経特異的にμ-オピオイド受容体を発現する遺伝子改変マウスを作製した。本遺伝子改変マウスにおいてモルヒネの有意な鎮痛作用は認められなかった。一方、tail-suspension法を用いた解析において、μ-オピオイド受容体ノックアウトマウスで観察される行動量の増加が、μ-オピオイド受容体をノルアドレナリン・アドレナリン神経特異的に発現させることにより野性型と同様のレベルまで減少していた。Tail-suspension法における行動量はストレス応答と関連していることが知られていることから、ノルアドレナリン・アドレナリン神経系に発現しているμ-オピオイド受容体はストレス応答の調節に関与していることが示唆された。
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