Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本研究の目的は火山噴出物におけるU-Th放射非平衡を用い、島弧マグマの発生から噴出までの諸現象に詳細な時間軸を与え、それを物理化学的に定量化することである。私はこれまでに三宅島溶岩の主要元素、微量元素、Sr・Nd・Pb同位体組成、及びU-Th-Ra放射非平衡を測定し、三宅島のマグマ形成に寄与したスラブ由来流体が、その放出からわずか数千年以内で地表での噴出に至ることを見出していた。昨年この結果を論文化し、国際誌JGRに発表した。本年度は鉱物単位でのRa-Th放射非平衡測定法を可能とするため、微小量Ra分析法の開発を行った。TIMSによる分析中の同位体分別効果を防ぐため、TETIMS法を世界で初めてRaに適用した。その結果、従来50fg必要であったRaの使用量を、最小1fgにまで減少することに成功した。本法を用いて、最近500年に噴出した三宅島溶岩のRa-Th非平衡を測定した。また、1983年溶岩の斜長石中のRa-Th非平衡を測定した。この斜長石のRa含有量は3fg/gしかなく、私が昨年開発した方法では測定不可能であったが、本年度開発した方法により高精度定量分析が可能となった。その結果、三宅島溶岩のRa-Thシステマティクスは一連の分別結晶作用では説明できず、非平衡度の異なる2つのマグマ、すなわち、高い非平衡度と低いTh濃度を持つ玄武岩質マグマ(BEM)と、低い非平衡度と高いTh濃度を持つ安山岩質マグマ(AEM)との混合により形成されたことが判明した。年代学的にはBEMの方がAEMより若く、したがって、500年以上前から定常的に存在したAEMに、新たにBEMが断続的に貫入しつづけていることが判明した。この結果を9月の岩石学会(仙台)にて口頭発表した。また、Goldschmidt国際会議(倉敷)において、これまで私が開発したU-Th-Ra分析法の総括を口頭発表した(招待講演)。
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