Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本研究は、ゲノム情報科学と実験生物学の手法を用い、バクテリアゲノムに多数存在するオーバーラップ遺伝子の進化と役割について明らかにすることを目的として行った。公開された50種の網羅的なゲノム情報解析から、原核生物においてオーバーラップ遺伝子が極めて多く存在し、それらがゲノムサイズや全ORFの数と比例して増えるという事が分かった。近種ゲノムにおいてオーバーラップが保存されなかった遺伝子の構造を比較した結果、オーバーラップ遺伝子の多くは塩基配列の突然変異によって生じたことが示唆された。またオーバーラップ構造の種間における差異を分類したところ、種の進化的距離と相関した割合の変化が見られたことから、見かけ上のオーバーラップ形成の頻度は種を超えて一定と考えられる。我々はその一例である遺伝子組(htgA-yaaW)について着目し、分子生物学的手法による機能解析を行った。htgA、yaaW両遺伝子の細胞内での転写が確認され、さらにこれら両遺伝子の欠失株において、熱ショック応答でのdnaK遺伝子の発現誘導が不安定になるという結果を得た。我々はその一例である遺伝子組(htgA-yaaW)について着目し、分子生物学的手法による機能解析を行った。htgA、yaaW両遺伝子の細胞内での転写が確認され、さらにこれら両遺伝子の欠失株において、熱ショック応答でのdnaK遺伝子の発現誘導が不安定になるという結果を得た。原核生物のオーバーラップ遺伝子は、ウイルス等で提唱されるようなゲノムサイズ縮小の為ではなく、ゲノム自体のダイナミックな変動と共に生成と分解を繰り返すと結論付けられる。一方で極めて稀な構造を持つ例も存在し、今回divergent構造のオーバーラップがアンチセンス制御として働く可能性も示唆された。本研究は、原核生物におけるオーバーラップ遺伝子の進化のダイナミズムを明らかにするとともに、情報解析を実験生物学へのスクリーニングに活用する事を試み、遺伝子機能解析の新たな手法として実践した。
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