Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本年度は前年度に引き続き、テレスコープアレイ計画に使用する光電子増倍管の絶対光量較正のための装置を開発した。校正原理は以下の通りである。直径50cm高さ10cmの円筒形のチェンバーに窓を開けそこに窒素レーザー光を入射する。箱内には純粋窒素ガスが充填されており、レーザー光は窒素分子によりレーリー散乱される。この散乱光の強度は元のレーザーのエネルギーと窒素ガスの密度から非常に正確に計算できる。この散乱光を別に開けた窓から取り出して光電子増倍管を校正するための光源として用いる。校正原理そのものは前年度にテストベンチを製作してチェックを行った。その結果、浜松ホトニクスが提供している校正データと矛盾しない結果をよりよい精度で得られる事がわかった。今年度はより校正作業を効率よく行う為にPMTの交換をチェンバーの外から行えるようにした。また、チェンバー内ガスの交換を真空ポンプによって行えるようにした。現在このチェンバーの製作が終了し実際の測定を行っている。望遠鏡全体の校正方法についても研究を行った。具体的には望遠鏡の100m先に電子線形加速器を設置して上空に向かって電子ビームを射出し、そのビームが発生する大気蛍光をわれわれの大気蛍光望遠鏡で観測するというものである。電子ビームそのもののエネルギーは半導体検出器や電流検出器などを用いて5%以下の精度で測定でき、またシャワーから望遠鏡までの距離が短いので大気による吸収・散乱はほとんど無視する事ができる。電子エネルギーが20eV〜40eVであればちょうど望遠鏡の視野内全体に広がるシャワーとなることがシミュレーションからわかった。つまりこの方法を使えば、あらかじめ別々の方法で校正されている鏡やPMTやフィルターを一度に校正できるというメリットがある。また、本年度からフロントエンドエレクトロニクスが全面的に改定されFADCを使ったものを採用することになった。これに伴いFADCのスピードと前置波形整形回路の時定数のマッチングをシミュレーションによってチェックした。この結果を考慮したエレクトロニクスボードの試作機は現在製作中である。