単一細胞の顕微解析による細胞質遺伝機構の分子形態学的研究
Project/Area Number |
01J05096
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
生物形態・構造
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西村 芳樹 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2001 – 2003
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2002)
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Budget Amount *help |
¥2,700,000 (Direct Cost: ¥2,700,000)
Fiscal Year 2002: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2001: ¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
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Keywords | 母性遺伝 / 葉緑体DNA / DNase / Native-PAGE |
Research Abstract |
細胞内小器官であるミトコンドリアや葉緑体は、各々細胞核とは異なる独自のDNAを保持しており、それらはヒトを含む多くの動植物において母性遺伝する。従来、この現象は雌雄の配偶子の大きさの違いに基づき、確率論的に説明されてきた。しかし全く同型の配偶子により生殖を行う単細胞緑藻クラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii)においても葉緑体の母性遺伝が観察されたことから(Sager,1954)、より積極的な母性遺伝制御機構の存在が示唆されてきた。1999年、我々はこのクラミドモナスを用い、雄葉緑体DNAが接合後90分以内に積極的かつ完全に分解されることを示した(Nishimura et al.,1999 PNAS)。そして今回、さらに雄葉緑体DNAの分解に関わる酵素の解析を行った。 我々はまず、接合子より無傷葉緑体を新規に開発したエアーブラシ法によって単離し、その中に含まれるDNA分解酵素活性の変化を、接合後の時間を追って観察した。DNA分解酵素の検出には、非変性条件で酵素活性を分析できるNative-PAGE in gel assay法を採用した。その結果、接合後90分後までに活性がピークに達する分子量140kDaの新規DNA分解酵素活性が検出された。さらに、葉緑体内のデンプン蓄積量が違う雌雄の配偶子を接合させることにより、接合子から雌雄の葉緑体をそれぞれ密度勾配遠心法で選択的に取り出す方法を開発した。この方法を用いて雌雄の葉緑体におけるDNA分解酵素活性の変化を比較したところ、DNA分解酵素活性の上昇は、父方の葉緑体でのみ起きることが明らかとなった。今回発見されたDNA分解酵素活性の上昇のタイミング、及び局在は、雄葉緑体DNAの分解と正確に一致するものであり、これが母性遺伝に関与する可能性が強く示唆されることとなった。 次に、我々は様々な生活環の細胞におけるDNA分解酵素活性の比較を行った。その結果、このDNA分解酵素活性は、配偶子誘導とともに雌の細胞でのみ誘導されることが明らかになった。以上の結果より、我々は今回発見された新規DNA分解酵素を雌配偶子特異的DNase (Mating type minus gamete specific DNase : MDN)と命名し、このMDNに基づく新しい母性遺伝機構のモデルを提唱した(Nishimura et al.,2002 Genes & Dev.)。
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Report
(1 results)
Research Products
(3 results)