Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
部分溶融体の構造安定・不安定を調べるために二つの実験的研究を行った。部分溶融体が出現する場所では大きな変形が期待されるので、変形による部分溶融体の構造安定性を調べる目的でレオロジー測定を行った。地球では物体の動きが重力に支配されるので、重力的に不安定な状況での部分溶融体の構造安定性を調べる目的で重力不安定実験を行った。変形中の試料の内部構造観察の必要性から、部分溶融体の代わりにアナログ物質を用いた。部分溶融体の固体相は柔らかく変形するので、アナログ物質として非常に柔らかいゲルを作成した。1.レオロジー測定変形量に制限の無い2重円筒型変形装置を作成し、その中にゲル+粘性流体の混合体を詰め、変形させた。変形中の固体相の動きのその場観察とトルクの測定から混合体のレオロジー的性質を調べた。混合体には降伏応力があり、降伏応力を超える応力を加わると流動を始める。流動状態の下では、固液が分離する。このことから混合体の構造安定・不安定を決める要因が降伏応力であることがわかった。2.重力不安定実験直方体の容器にゲル+粘性流体の混合体を詰める。その容器の上に一回り小さな容器を載せ、その中に下の混合体より比重の大きな粘性流体を詰める。容器の底のスリットを開き、重い液体を混合体に入れて、重い液体の動きと固体の動きを観察する。3つの段階がある。(1)重い液体が均質浸透流として固体相の間を移動し、固体相は流動しない。(2)重い液体が均質浸透流で移動しながら、固体相は流動を始める。(3)固体の流動集中領域に重い液体が集まる(チャンネル流)。流動開始が混合体の降伏応力で決まること、重い液体の不均質波長形成が粘性流体系のレイリー・テイラー不安定で近似できることがわかった。チャンネル流時、固液が分離することが示唆された。混合体の構造安定を決める要因が、降伏応力・浸透流とチャンネル流の競合であることがわかった。