Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
最終年度である本年度は、衛星データに対してNPP推定モデルを適用し、得られた結果と地上実測データとの比較・検証によるモデルの改良に重点を起き、研究を行った。紀伊半島の主要な樹林である杉・桧林において、試験領域を設定し、サンプリング木に対する胸高直径、樹高などの定期的な測定を行った結果をもとに、森林の年間純一次生産量を概算した。一方、同一領域のLandsat/ETM+データを用いて、前年度までに開発した推定モデルを適用し、年間純一次生産量を推定した。衛星による推定値と現地調査による概算値は、誤差の範囲内で一致し、モデルの妥当性が示された。これらの結果に関しては投稿論文として発表準備を現在進めている。また、全球を高頻度で観測するTerra/MODISやADEOS-II/GLIデータなどを利用し、植生純一次生産量の分布図を作成するために、これらの衛星データに対しても本推定モデルを適用し、検討を行った。紀伊半島周辺において上記森林における実測値、また、水田収穫量などの地上実測データと推定値を比較した結果、Landsat/ETM+と同様、誤差の範囲内で推定結果は実測値を再現することが明らかとなった。本研究により開発した推定モデルを用いることにより、多波長衛星データの情報を効率的に反映した植生指標VIPDをもとに、気温、日射量、日照時間などの気象データを併せて用いることにより、簡易に植生純一次生産量を推定するできることが示された。この手法を用いて、全球を高頻度で観測するTerra/MODISデータやADEOS-II/GLIデータから植生純一次生産量の時系列変化をモニタリングし、全球的な分布を把握することが可能であると期待される。