Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 2002: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2001: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Research Abstract |
入眠前覚醒の時間的長さと質,サーカディアンリズムの位相など入眠過程に影響する諸要因を極力統制した上で,夜間睡眠・日中仮眠の生理的入眠過程を検討した。大学生418名(男性235名,助成183名,21.1±8.5歳)を対象として,性格特性に関しては,矢田部・ギルフォード性格検査を,行動特性に関してはラザルス式ストレスコーピングインベントリーを,精神健康に関しては自己評価式抑うつ尺度および精神健康調査票を,生活・睡眠習慣に関しては睡眠健康調査票を実施した。睡眠健康調査票には,入眠困難性に関する3質問項目を追加した。この調査から,入眠潜時が20分未満で寝つきが良い「主観的入眠容易群」と入眠潜時が30分以上で寝つきが悪い「主観的入眠困難群」を抽出した。主観的入眠容易群は189名(45.1%),主観的入眠困難群は26名(6.2%)であった。両群から候補者をランダムにサンプリングし,研究内容を十分に説明し,研究協力の同意が得られた各群8名のボランティアを被験者とした。被験者には実験一週間前よりアクチグラフを装着し,睡眠・覚醒リズムを一定にし,日中運動量,食事回数・時刻,禁酒等を含む生活統制を行った。実験は2条件で構成し,カウンターバランスをとって実施した。両条件とも1夜の夜間睡眠と翌日日中の仮眠からなり,実験室での夜間就床時刻・起床時刻は,各被験者の習慣的就床時刻・起床時刻を使用した。日中仮眠の消灯時刻は前夜の就床時刻より15時間後(CT15)とし,消灯40分後に呼名点灯し仮眠を終了した。日中仮眠前に40分,2,500lxの高照度光照射を行うBright light (BL)条件と10lxの室内灯下で過ごさせるDim light (DL)条件を設けた。脳波,眼電図,筋電図を同時記録し,入眠過程を5段階に分類し10秒ごとに判定した。 その結果,主観的入眠困難群は主観的入眠容易群に比べて,夜間睡眠・日中仮眠とも入眠過程は延長しており,特にα並が消失してθ波期に至る入眠初期段階の遅延が顕著であった。入眠困難性を示した被験者の生理的特性を検討したところ,夜間消灯後1時間のHRが高く,交感神経系活動の高いことが示唆された。心理的特性については,主観的入眠困難群は主観的入眠容易群に比べ,神経質で抑うつ感や劣等感が強いこと,ストレスにうまく対処できず他者に原因や責任を転嫁する傾向が示され,主観的および客観的に入眠困難を呈する被験者は,特有の心理的特性をもつことが明らかとなった。さらにBL条件での日中仮眠時人眠過程は,主観的入眠容易群では延長し,主観的入眠困難群では逆に短縮した。主観的入眠困難群では入眠前の脳の活動性は上昇しており,もともと入眠しづらい状況がつくりだされている。こうした睡眠傾向の低い被験者に対して,BL条件の適用は脳の活動性を一過性に過活動化させ,その結果生じた急激なリバウンドによる低下が入眠を促進させたものと考えられた。
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