Project/Area Number |
01J09589
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Petrology/Mineralogy/Science of ore deposit
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
興野 純 筑波大学, 地球科学系, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2001 – 2002
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2002)
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Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 2002: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2001: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 不活性電子対効果 / 輝安鉱 / 輝蒼鉛鉱 / Sb5s^2孤立電子対 / Bi6s^2孤立電子対 / 立体化学的活性 / バンドギャップエネルギー / 軌道オーバーラップ |
Research Abstract |
本来、化学結合に寄与しない不活性なns^2孤立電子対は、周囲の配位環境と反発し、原子間距離は大きくなると考えられるが、輝安鉱(Sb_2S_3)や輝蒼鉛鉱(Bi_2S_3)、Paakkonenite(Sb_2AsS_2)では、その距離がファン・デル・ワールス半径の総和よりも短く、結合に寄与している可能性が示唆される。今回、輝安鉱に注目し、Sb5s^2孤立電子対の挙動と周囲の配位環境の変化を低温変化の下で観察して、さらにバンドギャップエネルギーの測定から不活性な孤立電子対の結合状態について検証した。 実験の結果、輝安鉱の基本構造は、Sb_4S_6リボン間が3.375Å、3.644Åと、ファン・デル・ワールス半径の総和よりも短かった。つまりSb5s^2孤立電子対が周囲と結合している可能性が示唆された。さらに、輝安鉱の低温単結晶X線結晶構造解析を230、173、128Kで行った。その結果、2種類のSbS_7多面体体積は温度低下に従って収縮し、Sb5s^2孤立電子対の立体化学的効果も収縮していた。しかし配位形態を示す球形度の値は各温度で常に一定であり、全元素が等方的に収縮していることが判明した。従って、室温で結合状態にあった孤立電子対が、低温でも周囲の電子雲と配位状態を維持したまま変化していた。 次に、輝蒼鉛鉱(Bi_2S_3)、輝安鉱(Sb_2S_3)、方安鉱(Sb_2O_3)のバンドギャップエネルギーを測定した。その結果、1.28eV(輝蒼鉛鉱)、1.64eV(輝安鉱)、4.31eV(方安鉱)であった。また、これらの結晶構造のBi、Sb-S二次配位結合距離は、輝蒼鉛鉱、輝安鉱では、ファン・デル・ワールス半径よりも短く、方安鉱はファン・デル・ワールス半径よりも長かった。従ってバンドギャップエネルギーの低下は、この孤立電子対が周囲の電子雲と結合していることに起因する可能性がある。つまり、輝蒼鉛鉱、輝安鉱の不活性ns^2孤立電子対が活性となり周囲と結合関係にあるためと考えられた。本研究によって、不活性ns^2孤立電子対は周囲の電子雲と結合状態となり、これによって不活性電子対効果を持つ半導体物質のバンドギャップエネルギーが著しく低くなると言える。
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