Budget Amount *help |
¥3,800,000 (Direct Cost: ¥3,800,000)
Fiscal Year 2003: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2002: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2001: ¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
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Research Abstract |
サケ科魚類サクラマスにおける雄生活史二型の個体群間変異,および年次間変動を生じる生態学的要因を明らかにするために,以下の調査と分析を行った。 北海道北部の森林を流れる同一水系内の河川において,2001年に始まった経年調査を継続し,成長期(6月)における摂餌量および食性(陸生/水生無脊椎動物比),および繁殖期(9月)における早熟雄(河川残留型)の個体群密度について,3河川,3年間分の時空間データを得た。 摂餌量と食性のデータ解析は一般化線型モデルを用いて行った。まず,2001年における摂餌量の月別データについて,河川,月,年級群(当歳魚・1歳魚以上),時間帯(午前・午後),および個体の体長を説明変数としてモデル選択を行ったところ,体長,時間帯,および月を含むモデルが選択され,6月に摂餌量が最も多くなることが示された。陸生/水生無脊椎動物比についても同様の解析を行ったところ,説明変数として体長,時間帯,年級群とともに,月が選ばれ,やはり6月に大きな値をとることが明らかとなった。一般にサケ科魚類の生活史分岐には初期成長が大きく影響することが知られているが,上記の結果はこの時期の餌量,とくに渓畔林から供給される陸生無脊椎動物量が生活史分岐に重要な役割を果たす可能性を強く示唆する。2001から2003年までの6月の摂餌量と食性についても一般化線型モデルを用いた同様の分析を行ったところ,河川と年次の間に交互作用が検出され,餌供給量の年次変動パタンは河川間で必ずしも同一ではないことが示唆された。これら餌供給量に関する結果は,潜在的には早熟雄の出現頻度を説明すると考えられるが,実際の早熟雄の個体群密度には河川間の変異こそ見られたものの,餌供給量との完全な対応関係は認められなかった。 以上の結果は,サケ科魚類の生活史分岐と渓畔林環境との関係を示唆する初めての知見であり,現在国際誌への発表を準備中である。
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