Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
アブラムシの混合コロニーに及ぼす季節推移と寄主植物個体変異の影響季節進行に伴う寄主植物の栄養レベルの悪化は、植食性昆虫の成長や繁殖などの生活史形質に重大な影響を与えている。本研究の材料であるカシワホシブチアブラムシは寄主転換しないアブラムシなので盛夏の寄主植物劣化の影響を免れない。そのため1本の木の中でモザイク状にしか残っていない好適な葉に様々な遺伝子型のアブラムシが集まっていると考えられる。このような混合コロニー内の遺伝子型を識別するためには解像度の高い分子マーカーの開発が必要である。平成15年度は新規で開発に成功した5つのDNAマイクロサテライトマーカーを用いてアブラムシ混合コロニー内の遺伝的多様性を季節推移と寄主植物個体変異の観点から調べた。2002年に季節ごと(春・夏・秋)に採集したアブラムシコロニーを使用した。採集は8-10コロニー/本で8本の木で行った。各コロニーから5-8匹を任意に選び、DNA抽出後に5つの蛍光マイクロサテライトプライマーでPCRを行った。遺伝子型判別にはシーケンサーを用いた。結果:春のアブラムシコロニーは既に複数の遺伝子型から成る混合コロニーになっていた。寄主植物の芽吹き直後に既に樹木内を移動・分散しているか、または複数の遺伝子型の幹母が集まって第一世代を産出していると考えられる。夏になると1つのコロニー内に含まれる遺伝子型はさらに増加した。これは寄主植物劣化のために好適な部位を求めて様々な遺伝子型が集まって形成されたコロニーであると示唆される。秋のコロニーは夏のコロニーに比較して遺伝的多様性が減少していた。盛夏を乗り切り、両性世代まで生き残った遺伝子型は少数であったと考えられる。コロニー内の遺伝的多様性の推移を寄主植物の個体変異の観点から分析すると、夏に二次シュートを出すカシワ個体と春のシュートだけを通年つけているカシワ個体とでは混合コロニーの動態が異なっていた。すなわち二次シュートを出すカシワに寄生していたアブラムシは盛夏を生き残る機会が増え、そのため二次シュートを出さない個体のコロニーより遺伝的多様性の高い混合コロニーになったと推測される。
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