Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
交雑分離集団である「十系780号X日高4号」でのF2及びF3個体での解析で得られた8つのQTLのうち後代でのSSRでの解析ではR遺伝子などの種皮色における準同質系ではこれらのマーカーとの間で対応関係はみられなかった。構造的な差異の可能性を明らかにするためにSEMにおいて種皮表面の観察をおこなったが、明確な差異はみられなかった。種皮色、特にR遺伝子と硬実性との間では全く別の因子の可能性が示唆され、機構の詳細な解明にはさらなる時間を要する。北大構内において設置した雑種群落での解析実験では、01年と02年および03年の3か年の調査において野生区では雑種個体は駆逐され、野生種が大半を占める結果になった。一方栽培区では雑種個体でも非硬実性の個体が多くを占めることとなった。しかし栽培区、野生区ともにIdh1遺伝子においては野生型の遺伝子が優占し、栽培区においてもつる性の個体が多くをしめることになった。これらの結果から3か年の栽培化実験において硬実性は容易に除去されるが、栽培化という過程においてはつる性から直立への変異の獲得が必要でつる性の遺伝子がIdh1近傍に存在することも示唆された。このように急速に野生区において雑種個体が消失した原因について現在越冬実験において確認中である。現時点でいえることは、栽培ダイズは野生ダイズを起源とし、その地域も日本や中国など各地で多元的に生じ、栽培化の後も野生ダイズとの関わりを持ちながら現在の栽培ダイズが成立するに至った。その過程で硬実性は容易に除去されながらもつる性の消失にはさらなる変異の獲得が必要であり、ダイズの栽培化の過程でIdh1遺伝子近傍の領域がダイズの栽培化の過程で関わっていたものと推察された。以上の結果を博士論文としてまとめるには実験の都合上、次年度まで渡ることになり、今年度中に遂行することが出来なかったことは残念至極である。