Budget Amount *help |
¥2,400,000 (Direct Cost: ¥2,400,000)
Fiscal Year 2002: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2001: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Research Abstract |
本研究は浮遊性有孔虫殻の同位体・微量元素組成を用いた古環境プロキシーを実験的に評価することを目的としている.このような古環境ブロキシーは,過去の海洋環境を数値データとして復元できるので,過去と現代の環境を直接比較する場合や,数値モデル計算の基礎データとして応用する上で有利である.本研究の特徴は,殻の色々な化学組成が環境因子から受ける影響を明らかにするために,環境をよく制御した飼育実験の結果から,両者の関係を直接的に評価を行う点である.そのために,前年度には水温,塩分をはじめとする環境因子を精密に制御することの出来る飼育実験系を設計し,組み上げた. 本年度は,前年度に引き続き,実験系を洗練することに注力し,飼育実験を展開した.前年度同様に,千葉大学海洋バイオシステム研究センターの研究船を用いて,千葉県鴨川市沖での浮遊性有孔虫の採取を行った.本年はそれに加え,海洋科学技術センターむつ研究所の木元研究員,琉球大学理学部の藤田助手の協力を得て,津軽海峡と沖縄県瀬底島周辺でそれぞれ生きた浮遊性有孔虫試料を採取することが出来た.各地点で採取した試料は速やかに千葉大学の研究室に持ち帰り,飼育実験の試料として用いた.これにより,日本近海の低緯度域から高緯度域にかけての3地点で採取される浮遊性有孔虫各種の飼育実験を行い,飼育実験に向いている種を検討した. また本年度から,海水の組成を変化させた条件下での飼育実験を行った.海水のマグネシウム(Mg)濃度を通常のものと二倍の濃度の条件を用意し,浮遊性有孔虫をそれぞれの海水で飼育し,殻を付加させた.いずれの条件下でも殻を付加させることができた.しかし,Mg濃度を増やした条件下で付加した殻は非常にもろく壊れやすかった.現段階ではこれは次のような理由が考えられる.有孔虫の殻はカルサイト(CaCO3)を主成分としている.一方無機的な沈着実験から,Mgはカルサイトの沈着を阻害することが明らかになっている.そのため,飼育海水のMg濃度を増やした条件では,通常よりも多い量のMgによって有孔虫による石灰化が阻害されたために,殻がもろくなったのではないかと考えられる.今後,このような実験を積み重ね,試料を蓄積し,殻の組成を測定することで,海水と殻の間の元素の分配における生物の役割ついて考察することができ,生物による石灰化過程の基礎的な理解につながると考えている. 本年度は,有孔虫殻の微量元素を用いた古環境指標について,およびその評価のための飼育実験についてレビューし,それを発表した.また,一般向けに環境指標生物としての有孔虫の役割についての解説をまとめた.
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