Budget Amount *help |
¥3,600,000 (Direct Cost: ¥3,600,000)
Fiscal Year 2003: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2002: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2001: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Research Abstract |
本研究では,複雑な結晶構造や組成を持つ鉱物結晶の分子シミュレーションと,それを可能とする組成・物理条件に対し幅広い信頼性を有す原子間相互作用モデルの非経験的構築及びその手法確立が目的である.また,電子状態から鉱物の熱力学特性・多形間の安定関係の予測を行う。 密度汎関数理論,格子動力学法と準調和近似を組み合わせ,熱振動の量子性を考慮して有限温度における結晶の熱力学特性の非経験的計算手法の開発・応用を行った。この手法により有限温度下で正しく固体の自由エネルギーを算出することが可能となった。これを用いて,金の圧力-体積-温度状態方程式を非経験的に予測し,近年地球惑星内部科学における最重要問題の一つである超高圧圧力計の不確定性に関し,従来の圧力計を補正する重要な知見を得た。また二酸化珪素(SiO_2)の高温高圧相平衡を例に取り,その非経験的予測をはじめて行った。従来の研究の矛盾点を検証し,地球下部マントル中部と下部における2種の相転移境界を予測し,地震学的観測結果の解釈を議論した。 さらにこれらの方法を,地球下部マントルの大部分を占める物質とされる珪酸塩ペロブスカイト(MgSiO_3),及びペリクレース(MgO)に適用し,実際の地球内部の高温高圧条件下でこれらの物質の状態方程式,弾性テンソルを予測し,観測データとの比較から下部マントルの化学組成変化や温度変化,また鉱物量比変化を定量的に検討した。その結果,地球下部マントル全域にわたっておおむね上部マントルと同じ化学組成が維持されていること,しかし,境界領域では上記の2相のみでは観測データを完全には説明できないことを明確に示した。極めて高い温度圧力条件から依然未解決であるこれらの問題に対し,物質科学的立場からの定量的アプローチ法の構築に初めて成功したといえる。これらの成果は高く評価され,日本高圧力学会平成15年度奨励賞を受賞した。
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