Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本年度は広島大学大学院理学研究科に受入機関を変更し、遷移金属錯体の結合距離を測定した。なぜなら、化学平衡における同位体分別の程度は、平衡下にある化学種間の結合距離の差と関係があるからである。具体的には、つくばの高エネルギー加速器研究機構に設置されている放射光施設を利用して、銅(II)塩化物錯体の結合距離をX線吸収分光法により決定した。その結果、銅の周りの塩化物イオンの数により、結合距離が微妙に変化することが示唆された。得られた結果は論文としてまとめ、学術雑誌に現在投稿中である。また前年度までに、ニッケル同位体存在度の変動幅をさまざまな隕石試料で測定していたが、今年度は、これをニッケル鉱床試料に応用し、地球内部のさまざまな地質学的プロセスにより、どの程度の同位体分別が存在しているのかを、隕石との比較というかたちで確認した。その結果、高温で生成したNiS鉱床間には、隕石相互よりも大きな同位体分別が存在することがわかった。先年までに決定したニッケル金属試薬間の同位体分別は、亜鉛の場合とは違い、工業的な精製段階での同位体分別と解釈するよりもむしろ、その原料である鉱石自身の持つ同位体分別の程度を反映していると結論づけられた。この結果は、論文として執筆中で、現在は共著者の査読の段階であり、本年度中には学術雑誌に投稿する予定である。さらに、先年度の亜鉛の同位体存在度を正確に決定した研究業績をもとに、多重検出器を備えた誘導結合プラズマ質量分析計における同位体差別効果について、第13回ゴールドシュミット国際会議において口頭発表を行った。
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