Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
様々な分子超伝導性発現の可能性について探ることは大変興味深く、学術上、意義があるものと考えられる。そこで、これらの超伝導性は分子内振動とフロンティア軌道との間の振電相互作用によって引き起こされるという仮説に基づき、電子・フォノン結合定数を計算した。分子性結晶が大きな超伝導臨界温度をもつための基礎的条件を考察するため、分子サイズが小さくて対称性が高い、立方体型クラスター、キュバン(C_8H_8)について考察した。その結果、キュバンでは非常に大きな電子・フォノン結合定数の値0.495eVが得られ、200K以上で超伝導性を示し得ることを提案した。また、キュバンのモノアニオンにおいては重水素置換による逆同位体効果が観測される可能性があることを理論的に示した。アセン系分子の水素原子をフッ素原子で置換したフルオロアセンについても全く同様の研究を行ったが、フルオロアセンはアセンよりも非常に大きな電子・フォノン結合定数を持つことがわかった。アセン系分子とフェナントレン系分子のカチオンにおける電子・フォノン結合定数を計算し、さらには、電荷移動について考察した。アセン系分子とフェナントレン系分子など、ナノサイズ分子の常伝導状態と超伝導状態の関連について考察した。これらの一連の研究から、分子性化合物が高温超伝導性を示す条件として「(1)分子サイズが小さい(2)分子が高い対称性をもつ(3)高振動数振動モードが超伝導性発現に重要な働きをする(4)電気伝導に関わらない原子の質量を重くする」ということを提案している。
All Other
All Publications (17 results)