Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
ヒト間葉系幹細胞(以下、hMSC)(Bio*Whittaker社製)は、骨髄から単離された多分化能を有する非造血幹細胞であり、脂肪細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、心筋細胞、腱細胞等の間葉系細胞に分化できる。近年、in vitroにおける脂肪細胞、骨芽細胞、軟骨細胞への分化・誘導方法が確立され再生医療等への応用が期待されている。本実験の最終目標は、iAFLP法によるhMSCの分化・誘導過程における時系列的な遺伝子発現プロファイルを構築することである。その第一歩として、hMSCの脂肪細胞分化過程における遺伝子発現変化に着目した。脂肪細胞は、体温維持を司る褐色脂肪細胞とエネルギーを貯蔵する白色脂肪細胞に大別される。本実験では、白色脂肪細胞分化に焦点をあてることにより、肥満、II型糖尿病の研究に将来役立てるための遺伝子発現プロファイルの抽出を試みた。細胞のロットにより、1回だけの分化・誘導による分化率に差があった。脂肪細胞への分化率がhMSCのロットに依存すること、1回の分化・誘導ステップで30%以上の分化能を示すロットが存在することが報告されていた。(私信;Bio*Whittaker社)。従って、本実験には1F2155を使用することに決定した。同時に、total RNAの泳動より、RNAはインタクトなものであった。しかし、RNA収量を比較すると、1F1061の方が30%減となっていることから分化・誘導をかける際の細胞数が若干少なかったと推測できた。同様のタイムコースで実験を行っているために、これは細胞増殖にも差があったためと考えられた。脂肪細胞の発生はヒトと齧歯類では重要な点でいくつか異なっていた。最近、マイクロアレイを使った遺伝子発現プロファイルのデータにおいても、分化後期では3T3-L1細胞と同様な挙動を示すが、分化初期では異なったプロファイルをとっていた。そもそも、hMSCは脂肪細胞への分化初期とコミットに関連する研究に非常に理想的な細胞であり、本実験を開始する意義は十分にあると断定できた。