マウス胚における放射線誘発ゲノム不安定性におけるp53遺伝子の役割
Project/Area Number |
02F00268
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 外国 |
Research Field |
環境影響評価(含放射線生物学)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
丹羽 太貫 京都大学, 放射線生物研究センター, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ADIGA Satish Kumar 京都大学, 放射線生物研究センター, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2002 – 2003
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2003)
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Budget Amount *help |
¥1,900,000 (Direct Cost: ¥1,900,000)
Fiscal Year 2003: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2002: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | マウス初期胚 / ゲノム防御機構 / p53依存性Sチェックポイント / 遅延細胞周期抑制 / 遅延アポトーシス / p21 / p53 / ATM / NBS / Sチェックポイント |
Research Abstract |
Adiga氏は、過去年にわたって当研究室に籍をおき、照射精子受精卵と初期胚におけるp53依存性ゲノムクロストークとゲノム不安定性について研究を行ってきた。この研究の目的は、初期発生におけるp53依存性放射線損傷応答の機構とその生物効果を解析することにある。そして本研究の特徴は、照射した精子を用いてDNA損傷を卵子に導入し、その後の放射線応答をしらべるため、細胞質に対する放射線の影響を考えなくてもいい点で、純粋の応答を見ることが出きる点にある。 これまでに得られた結果は、通常の体細胞でこれまで得られていた常識を覆すものであった。すなわち、これまでの培養細胞などでの解析では知られていなかったp53依存性のSチェックポイントの存在が今回の研究により、初期胚において新たに発見された。そして照射精子で受精しても初期発生では卵割に遅延は見られず、32細胞期ころにようやく遅延が見られるようになる。これに呼応して、通常の体細胞ではp53の下流にあって転写活性化を通じて機能するp21は、照射精子受精卵において16-32細胞期になってようやくmRNAが検出できるようになる。すなわちp21は遅延的に活性化を受ける。さらにアポトーシスも遅延的に活性化され、胚盤放期において内細胞塊の細胞にようやく認められるようになる。これらの表現型は、p53-/-の照射精子受精卵とその後の初期発生では見られない。興味深いことに、p53-/-の胚では、照射精子での受精でも1細胞期でのSチェックポイントが見られないが、この条件では染色体異常が非常に頻度高く起こるため、2細胞期で染色体不分離による分裂阻害で発生が停止する。またp21-/-の条件では、32細胞期から認められるようになる分裂遅延が起こらない。しかしこの条件では、微小核を指標にした染色体異常頻度が高くなる。すなわち遅延的に染色体異常が誘発され、その後胚盤胞の内細胞塊でアポトーシスの頻度が高くなる。 以上の結果は、p53の下流にあるゲノム防御機構には階層性があり、それらは発生の時期で異なる。すなわち、p53依存性Sチェックポイントは1細胞期から機能しており、その下流のp21による細胞周期の遅延は32細胞で機能するようになる。さらにp53により活性化されるアポトーシスの系は、内細胞塊になって初めて機能するようになる。以上のゲノム防御機構の階層性は、本研究により世界ではじめて明らかになったものである。
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Report
(2 results)
Research Products
(12 results)