Budget Amount *help |
¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
Fiscal Year 2003: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2002: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
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Research Abstract |
GST-Bach1融合蛋白質を大腸菌で発現・精製し,ウサギに注射し抗血清を計6種類得た。免疫沈降に使用可能な抗体をスクリーニングし,うち1つは内在性Bach1を免疫沈降できることを確認した。NIH3T3細胞を用いて,ヘミン処理前後のBach1-エンハンサー複合体の動態をクロマチン免疫沈降法で検討した。 NIH3T3細胞では,HO-1の発現はごく低いが,細胞をヘミン(10μM)で処理することにより,2-3時間内にmRNA転写が強く誘導された。この時間経過で,HO-1エンハンサーへのBach1の結合量をクロマチン免疫沈降法で測定したところ,誘導前にはエンハンサーにBach1がMafKとの複合体として結合しているが,ヘミン処理後30分内にBach1がエンハンサーから解離することが明らかになった。この間,MafKはエンハンサーに結合したままであり,Bach1の解離とともに活性化サブユニットNrf2がエンハンサーに結合してくることも判明した。転写抑制や活性化に関わるクロマチン修飾を同様にクロマチン免疫沈降法で検討したところ,Bach1により転写が抑制されている状態でもクロマチンは活性化型の修飾(H3およびH4ヒストンのアセチル化やH3 K4のメチル化)を受けていた。Bach1はエンハンサーに結合し転写を抑制するが,この抑制は活性化の前段階に相当する状況にあること,すなわち,Bach1はエンハンサーやプロモーターにおける転写複合体を途中の段階に留め置くこと(poising)により転写を抑制すると考えられた。さらに,ヘムにBach1を標的としてその活性を変えることにより,エンハンサー上での転写抑制因子と活性化因子の動的変換を誘導することが理解された。すなわち,生命にとって必須の補欠分子ヘムが,核内では転写複合体の動態制御をも行うことが初めて明らかになった。
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