Research Abstract |
本研究では,室内における音声を代表とするような音響現象について,検討を行った. 初めに,人間が通常聞いている音環境をシミュレーションするためには,音波がどのように耳介に到達するかを測定もしくは測定し,分析を行う必要がある.このような音源から聴取者までの音波の伝播特性を頭部伝達特性関数(Head Related Transfer Function)とよび,立体音響再生技術の根幹を成している.このようなHRTFを推定するに当たっては,特に聴取者が1名の場合については,さまざまな考察がなされており,その成果は民生用機器などへの応用が図られている.しかし,聴取者が複数並んで存在する場合,お互いが存在することによる影響が音波に及ぶため,各聴取者の耳に届く音波を推定することは単一の聴取者の場合と比較してより複雑な問題となる.従来の研究では,頭部を単純な球モデルで扱うことが多かったが,実測の結果には一致しないことが多い.そこで本研究では頭部を3つの層(それぞれ皮膚,骨,頭内と仮定)からなる球とみなし,3層と仮定することにより音波の伝播がどのように変化するのかHelmholz方程式をもとに物理的に解くことにより,複数聴取者が存在する場合の,聴取者のHRTFを推定することを試みた.単純な球を用いた解析結果と比較した結果,最大3dBのひずみが得られ,詳細な頭部のモデルを用いることによる特性の変化が確認された. 続いて,室内で話された音声には,音声以外に室内で発生する雑音が混合される.この雑音の混入は,音声の伝送や認識に大きな影響を与えるため,雑音成分を除去もしくは低減することが望まれている.実験では,雑音と音声のスペクトル情報を統計的に処理することで,雑音を低減することを試みた.その結果,音声の明瞭度などと対応があると言われるセグメント毎の信号対雑音比が,5から11dB改善することができ,雑音の低減を図ることが達成できた.
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