Research Abstract |
前年度の研究から,Bach1によるヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)遺伝子の抑制がヘムにより解除されること,そして引き続き転写活性化因子Nrf2が作用することによりHO-1が誘導されることを見いだした。今年度は,Bach1のもう一つの標的遺伝子グロビンについて検討した。クロマチン免疫沈降法を用いてBach1とグロビン遺伝子エンハンサーの結合を測定したところ,未分化赤芽球細胞ではBach1が結合していること,これに対してヘム濃度が上昇した場合にはBach1が解離することを確認した。したがって,生命にとって必須の補欠分子ヘムが,核内では転写複合体の動態制御をも行うことが確立された。このような制御系にBach1の兄弟因子であるBach2も関与する可能性を検討するため,Bach1とBach2の二重変異マウスを交配実験により作成した。そうしたところ,二重変異マウスには極めて重篤な異常が生じることが観察された。今後は,この異常の本態と分子機構,そしてその正常過程におけるヘムの関与などを追求していきたいと考えている。
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