Research Abstract |
平成16年度は、昨年度から開発を進めてきた新しいダイヤモンドアンビルが完成したので、それを使って、加圧軸とは直角方向からX線を入射して高品質のX線回折パターンをとることができる新しいガスケット技術をさらに改良した。まず高純度ボロン/エポキシ樹脂の混合体からなる円板を作成し、その中心部に開けた穴に粉末試料を直接入れ、外側にカプトン樹脂を切り抜いて作ったドーナツ状のディスクを嵌めるという構成により、少なくとも65GPaまでの超高圧まで安定した圧力の発生が行え、かつ任意の角度からX線を入射し、低いバックグラウンドで試料の回折線が明瞭に得られる技術が確立された。これらの新しいガスケットの加工には、Qスイッチでパルス状にしたYAGレーザー加工機が威力を発揮している。この新しいダイヤモンドアンビルとガスケット技術を使って、筑波のフォトンファクトリーおよび西播磨のSPring-8で、何度かマシンタイムをもらい、室温65GPaまでの領域でMgO, CaSiO_3, SiO_2, Fe, Coなどを試料として実験を行い、多くのデーターを得た。またCaSiO_3に関しては、室温の実験だけではなく、レーザーで試料のみを加熱し、加熱による応力場のリラクゼーションの影響を調べることにも成功した。またこの実験を通して、新しいガスケットはこのような加熱実験にも使えることが確かめられた。これらの実験で得られたデータは、従来の同種の実験に較べて遙かに質が高く、従来の単純な1軸応力場での弾性変形に基づく理論では解釈できない微細構造が明らかにされた。実験技術の開発に関する部分はすでに論文としてまとめてRev.Sci.Instrum.に投稿し受理されており、印刷に入っている。データ解析の方は、塑性変形の影響を考慮した理論を構築中で、それに基づいた解析が進行中である。
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