Budget Amount *help |
¥3,600,000 (Direct Cost: ¥3,600,000)
Fiscal Year 2004: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2003: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2002: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Research Abstract |
動物が外界からの刺激をどのように脳内の神経活動へと表現するかは,脳のはたらきを理解する上で重要な問題である。近年,脳内情報表現およびその処理には,神経細胞集団の同期的かつ周期的な活動の重要性が指摘されている。本研究においては,比較的単純な神経系をもちながらも,高度な嗅覚識別・学習能力をもち,かつ嗅覚神経系に神経集団の同期振動が顕著にみられるナメクジを用いて,嗅覚情報の情報処理について生理学的研究を行った。今年度は,前年度に報告した嗅上皮から記録される2.5HzのElectro-olfactogramについて,その情報処理上の役割を解析した。ナメクジの末梢嗅覚神経系である触角神経節からは,においの非存在下においても常に1-2Hzの局所電場電位が記録されるが,これは多数の神経の周期的同期活動を示している。流速の速い(0.18ml/s)におい刺激によって嗅上皮上に2.5Hzの振動が現れると,この振動は触角神経節の振動を2.5Hzの振動へと引き込んだ。流速のおそい(0.10ml/s)におい刺激では2.5Hzは観測されず,引き込みも起こらなかった。両方の流速において,におい刺激中には嗅覚中枢へと情報をおくる触角神経束からのスパイク活動は増加した。このスパイクの発生するタイミングの自己相関解析により流速の遅い場合では約1.2Hz,速い場合では約2.3Hzでの周期性があることが明らかになった。また,さらに触角神経節における局所電場電位の位相と,におい応答中のスパイク発生のタイミングを解析した結果,多くのスパイクは電場電位のピーク位相に発生し,この振動を引き起こす神経回路はにおい情報を中枢へと伝える神経細胞の発火タイミングを周期的に同期させている可能性が示された。また,嗅上皮の振動活動には一酸化窒素合成酵素の働きが必要であり,セロトニンは同期性を高めることも明らかにした。
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