Budget Amount *help |
¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
Fiscal Year 2003: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2002: ¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
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Research Abstract |
本研究では,ネパール・ヒマラヤの氷河変動について次の二つの事柄を取り扱うこととしている.1)氷河地形の分布とその編年から最終氷期以降の氷河変動史の復元.2)空中写真判読によって,近年の氷河変動を個々の氷河について復元による,ネパール・ヒマラヤにおける温暖化の影響評価. 1)ついて,ネパール・ヒマラヤ東西から5つの山域を選び,空中写真判読によって対象山域内の氷河地形,モレーンの詳細な分布図を作成した.地形層序及びフィールド調査時のモレーンの風化度を主な指標とした相対年代を用い,分布するモレーンについてステージ区分を行った.この結果,いずれの山域においても分布するモレーンを5つのステージに区分できた.それぞれのステージに区分されたモレーンから14C及び光ルミネッセンスによる絶対年代を得て,各ステージの形成期を特定できた.この結果,ネパール・ヒマラヤでは最終氷期以降少なくとも酸素同位体ステージ3,全球の最終氷期極相期,晩氷期,完新世,小氷期に顕著な氷河拡大があったことがわかった. ここで得られた最終氷期の氷河編年にもとづき,最終氷期極相期のネパール・ヒマラヤにおける気候復元を,当時の氷河平衡線高度の復元によって試みた.この結果,南西モンスーンが衰退はしていたものの,現在同様モンスーンが氷河涵養における最大要因であったことがわかった.したがって,堆積物による古気候復元でしばしば指摘されるようなステージ2におけるモンスーンの消滅は想定できない現象である,と結論づけられる.また北ほど著しく乾燥していたことから,チベット氷床説についても懐疑的な見解に至った. 2)について,現地調査時の測量データの解析を進めた.この結果,ネパール東部において近年氷河の後退が加速される傾向が認められた.また永久凍土からなる岩石氷河の測量結果からも永久凍土の融解,またその速度が加速されている傾向が顕著となった.氷河の後退傾向は既存の研究によっても指摘されていたが,本研究によりその傾向が増長されていること,また氷河のみならず永久凍土も含めたヒマラヤの雪氷圏全体の縮退傾向が益々著しくなっていることを初めて明らかにした.
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