Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
平成16年度は、研究対象である琵琶湖水系のハゼ科魚類トウヨシノボリにおいて、開発したマイクロサテライトDNAマーカーを用いて、琵琶湖内において集団間の遺伝的関連性を調べた。その結果、昨年に行ったミトコンドリアDNAの解析結果と同様に、琵琶湖水系内において明確な集団構造は確認されなかった。本研究の比較対象であるハゼ科魚類ヌマチチブの雄の成熟年齢(年齢は鱗輪数から推定)を、産卵基質である石の多い南浜(琵琶湖北東部)と石の少ない近江舞子(西部)で調査したところ、近江舞子では雄は3歳から繁殖を開始し、南浜においては1歳から繁殖に参加することがわかった。産卵基質(タイルを使用)の量を操作した室内実験を行ったところ、水槽内に設置したタイルの数に関わらず、大きな雄ほど巣場所を巡る雄間競争に勝利し、巣場所を確保できることがわかった。タイル数の少ない水槽において、大きな雄ほど雌に番い相手として好まれた。一方、多くのタイルを設置した水槽では、全長に対して背鰭の長い雄ほど、雌に好まれることがわかった。これらの実験結果は、石の少ない環境では、大きな雄は巣場所を巡る雄間競争と雌の配偶者選択性を通じて高い繁殖成功を得ることを示唆する。このように、石の少ない環境ほど大きな雄は繁殖に有利であるので、石の少ない近江舞子では、雄は成熟を遅延させて大きく成長してから繁殖を行うと考えられた。また、今回、石量に応じて雌の配偶者選択性に違いが見られたが、実験に使用された個体は全て同一個体群から採集したものであることから、ヌマチチブでは、雌の配偶者選択性は可塑性を持つことを示唆する。
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Journal of Ethology 22
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Ichthyological Research 51
Pages: 99-105
Molecular Ecology Notes 4
Pages: 449-451