Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本年度の研究実績の概要は以下の2点にまとめられる。1.イエシロアリ内源性セルラーゼを大腸菌で異種発現させるためのよりよい系を構築した。発現用ベクターと宿主の組み合わせ、培養温度と収量の相関について詳細な検討を行い、イエシロアリ内源性セルラーゼを大腸菌で異種発現させる系を構築した。その際、封入体として生産される割合が高いことと凍結溶解を繰り返すと比活性が容易に下がることが問題となったため、グルタチオンS-トランスフェラーゼとの融合タンパク質として発現させ、アフィニティ精製とプロテアーゼ溶出処理を介して迅速な回収を行うことで対処した。2.シロアリ内源性セルラーゼの存在が共生関係に先立つことを示した。シロアリセルラーゼの起源と役割の進化を考察するために必要な外群として、尾索動物門ホヤ綱カタユウレイボヤ内源性の糖加水分解酵素ファミリー9メンバーのクローニングと配列の解析を行った。その結果、カタユウレイボヤとイエシロアリの内源性セルラーゼ遺伝子間でイントロン・エキソン構造が保存されていることが明らかとなった。これは、シロアリとカタユウレイボヤの共通祖先、つまり左右対称性動物の祖先に内源性セルラーゼが存在していたことを示唆するデータである。このことから、下等シロアリのセルロース分解系の成立過程について提案されている2つの相反するシナリオ、すなわち、内源性セルラーゼの存在が先か、あるいは共生関係の成立が先かというシナリオについて、おそらく前者であることを示した。
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