Budget Amount *help |
¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
Fiscal Year 2003: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2002: ¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
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Research Abstract |
純電子プラズマを用いて,複数個の渦糸が格子状配列に並ぶ現象「渦結晶」が観測されており,背景渦度の存在が影響を及ぼしている可能性が示唆されている.本研究では,薄く広がった電子プラズマの背景渦中に,様々な初期配位で三本の渦糸を入射し,その時間発展について細密な画像計測を行うことで,秩序化の過程における背景渦度分布の寄与について考察を行った. その結果,以下の事実を明らかにした. a)三本の渦糸の運動を詳細に計測して,背景渦は任意の初期位置に置かれた渦糸を正三角形の頂点の位置に移動させ,しかもその対称性の高い配位を準定常的に維持する働きを持つことを定量的に示した.更に,渦糸が対称位置に落ち着くまでに要する時間は,背景渦の循環が大きいほど短くて,分布の微細な構造には強く依存しないことを示した. b)既存の理論によれば,対称的な渦糸の配意は,境界壁がなければ維持される.しかし実験では不可避的に境界壁があるから,鏡像渦糸の効果によって渦糸の対称配位は不安定になると予想される.これに対して本実験は,渦糸は不安定であるが,背景渦は壁による不安定効果を抑制して,対称配位にある渦糸の相対位置を保つ働きを持つことを示した. c)対称性の高い構造形成の理論解析において採用される,いくつかの積分量を実験的に評価して,その保存性の強さの序列を示した.通常極値化の対象となるエントロピーとエンストロフィーの緩和は確かに速いが,変化の速いのは背景渦ではなくて,渦糸の変形に由来する成分であること,従って統計的な緩和理論だけでなく力学的検討も加えなければならないことを示した. この成果は,物理学会他,複数の研究会で報告している. また,この成果をとりまとめた論文は,Phys.Rev.Eに掲載された.
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