Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 2003: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2002: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Research Abstract |
本研究では,MeV重イオンとC_<60>分子の衝突及びそれに伴う緩和(分解)過程を見ることにより,多体系との相互作用の微視的解明を目的に研究を行った.多原子系との衝突においては,電離,電子励起,振動励起などの多くの自由度にエネルギー分配されるため,エネルギー付与量だけでは分解の描像は決まらない.標的電子との相互作用に話を限ったとしても,分解を引き起こすトリガーとして,次の二つの可能性を考えることができる.一つは,多重電離によって生成された多価のC_<60>イオンが,クーロン斥力により分解するクーロン爆発的描像.もうひとつは,高い内部励起エネルギーにより不安定化し崩壊する描像である.そこで,それらの寄与を実験的に決定するために,多重コインシデンスシステムを確立し研究を行った.具体的には次の3つに関して同時測定を行った. (1)衝突により生成された分解片イオンの飛行時間測定(TOF),(2)衝突時に放出される二次電子個数(n_e),(3)衝突後の価数選別された入射粒子(q'). 測定されたTOF-n_eコインシデンススペクトルから,放出電子数依存の分解パターンを得ることができた.この結果,分解過程が,分解直前の一時的高励起多価イオンC_<60^<r+>>^<**>の価数rでは決まらず,内部エネルギー量で支配されることが検証された.これは,低速多価イオン衝突の結果とは全く対照的な結果である.また,2電子捕獲から3電子損失まで系統的に測定した結果も得られている.今回得られた放出電子個数分布は,イオン衝突によるC_<60>の多重電離確率を直接測定していることに対応している.多数の分解片イオンが生成するため従来の反跳イオンの価数測定では多重電離分布を決定することは出来ず,これは今回始めて得られた重要な結果である.結果は,n_e〜10での盛り上がりのある構造をもつことが分かった.局所電子密度近似によるエネルギー付与分布の計算と比較した結果,この構造はクラスターや巨大分子に特有の構造であるという結論に達した.多重電離確率の理論計算は容易ではないが,付与エネルギーの12パーセントがイオン化ポテンシャルに用いられるとすると,比較的良く実験を再現することが分かった.また,統計的エネルギー付与モデルによる計算を行うとさらに良く分布を再現できることが分かった.Au衝突(0.4MeV)においては,非常に少ない電子個数であるにも関わらず,激しい多重分解が優勢であり,核的阻止能の寄与を支持する結果を得た.
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