Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
小腸上皮細胞の刷子縁膜に発現するペプチドトランスポータ1(PEPT1)は、H^+勾配を駆動力として小分子ペプチドやペプチド類似薬物の輸送を媒介し、生理学的、薬物動態学的に重要な役割を担っている。本研究では、分子機能のコンピュータシミュレーションを活用し、PEPT1の種々輸送特性を規定する詳細な輸送メカニズムの解明を試みた。PEPT1を介した[^3H]glycylsarcosine(Gly-Sar)取り込みはpH5.5に最大値をとるベル型のpHプロファイルを示すのに対し、ceftibuten取り込みはpHの低下と共に増加した。取り込み実験に用いた範囲のpHにおいて、Gly-Sarは91%以上が電気的に中性であるのに対し、ceftibutenはアニオンとして存在することが分かった。さらに、Gly-SarのKm値はpH5.5で最小値を示し、pH5.0で上昇したが、ceftibutenのKm値はpHと共に低下した。これらの結果と文献情報に基づき、H^+はH^+結合部位だけでなく基質認識部位にも結合し、基質結合に影響を及ぼすこと、またその影響は基質のチャージによって異なることが推察された。推測したメカニズムをもとに14状態モデルを導き、PEPT1機能のシミュレータを構築した。その結果、Gly-Sar輸送の濃度依存性やpH依存性、膜電位依存性が再現できることが明らかとなった。さらに、ceftibutenやチャージを有するジペプチドの輸送特性もシミュレート出来たことから、推測した輸送メカニズムの妥当性が示唆された。本研究成果は、PEPT1の機能特性を包括的に表す輸送メカニズムを初めて提唱したものであり、前年度までに構築したGly-Sar経細胞輸送モデルに本PEPT1モデルを組み込むことによって、細胞外pHの変化などの細胞環境の変動にも対応し得る経上皮輸送予測システムへと発展できると考えられる。
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Pflugers Archiv European Journal of Physiology 449・2
Pages: 186-194