Project/Area Number |
02J03006
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Fluid engineering
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Research Institution | Institute of Space and Astronautical Science |
Principal Investigator |
古館 美智子 独立行政法人宇宙航空研究開発機構(宇宙研), 宇宙輸送工学研究系, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2002 – 2003
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2003)
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Budget Amount *help |
¥2,400,000 (Direct Cost: ¥2,400,000)
Fiscal Year 2003: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2002: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Keywords | 極超音速流 / 熱化学非平衡 / 回転・振動緩和時間 / QCT / マスター方程式 / 非平衡流 / 数値流体力学 |
Research Abstract |
現在、金星探査への関心が世界的に高まっている。日本でも、金星大気を周回軌道から探査する計画や、金星大気に気球を投入して大気成分などを調べる計画が検討されている。本研究は金星探査宇宙機が金星大気突入時の熱化学非平衡流れ場から受ける影響を正確に見積もることが可能な数値解析手法の開発を行い、宇宙機を減速させるのに欠かせないエアロキャプチャ技術の確立に貢献しようとするものである。エアロキャプチャが行われる金星大気の高高度域では大気の密度が低いため、宇宙機周りの流れは気体分子のさまざまな内部エネルギーモード間の熱非平衡を伴ったものになる。また、気体分子は宇宙機周りに発生した弓状衝撃波によって加熱されてさまざまな化学反応を起こすが、その反応速度は衝撃層内の位置により異なる化学非平衡になる。これらの熱・化学非平衡状態を正確に模擬できることが、宇宙機の空力を正確に見積もれる前提となる。そこで、本研究では気体分子の各内部エネルギーモード間のエネルギー緩和現象を適切に表現できるモデルを構築することを目的とする。本年度は、昨年に引き続き、この問題を分子衝突の観点から解析する手法を検討した。 金星大気の主な大気成分である二酸化炭素は3つの原子からなり、並進、回転のほかに4つもの振動モードを持つ。このため、二酸化炭素分子を分子衝突解析するのはかなり複雑なものとなる。初めに手法の有効性を検討するため、より簡単な分子構造をもつ水素原子を対象にして分子衝突解析を行った。水素分子は2原子分子であり回転・振動のエネルギー準位はたかだか359程度であり、全ての準位を数値的に扱うことができる。そこでまず、準古典的軌道解析(QCT)を行い、水素分子のすべての回転・振動準位間の遷移速度を平衡温度1,000〜10,000Kについて算出した。水素分子について回転・振動準位を同時に考慮してのQCTは過去にあまり行われていない試みである。得られた遷移速度を検証するため、回転遷移については分光実験で測定されたQ-branch self-broadening係数と、振動遷移ついては衝撃波管を用いて測定されたK_<10>係数との比較を行い、よい一致を得た。次に、QCTで得られた速度係数を用いて、緩和過程の回転・振動準位の数密度変化に関するマスター方程式を解き、巨視的な回転緩和係数、振動緩和係数を求めた。得られた係数を実験値および過去の計算値と比較した。その結果、比較的低い温度では実験値および過去の計算値と良く一致をした。しかし、分子のほとんどがかい離するような高温度条件ではかい離の準定常状態(QSS)と呼ばれる状態が長く続き、このときの緩和過程での平均エネルギー履歴はLandau-Teller型のものと大きく異なるため、緩和係数の求め方を検討する必要性が認められた。しかし、この問題は分子種によって異なった性質のものとなる。したがって、本来の目的である二酸化炭素分子を対象とした解析に先立った手法の有効性の検討という観点からは、今回用いた手法は十分有効であると示された。 これらの解析は、パーソナルコンピューターを用いて行った。また、得られた研究成果について、国内および海外の学術会議において口頭発表を行った。
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