Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
前年度の研究において、人工シデロフォアを用いてシデロフォアー鉄(III)錯体の金属配位部位近傍の置換基の変化が、微生物の生長に及ぼす影響について検討したところ、ヒドロキサム酸末端置換基をメチル基からエチル基に変えることで微生物の生長が遅くなり、このようなわずかな違いでもシデロフォアによる鉄輸送機構に影響を与えることを明らかにした。本年度では、本研究で新規に合成した人工シデロフォアのさらなる応用を目指して、人工シデロフォアのアンカーであるトリス(2-アミノエチル)アミンに他の物質を修飾できるような置換基の導入を試みた。導入する置換基としては、それ以後の誘導化を行いやすいカルボキシル基を選択した。まず、目的化合物をビス(2-アミノエチル)アミン骨格と反応活性な側鎖置換基を有するアミノ酸誘導体の二つのパーツに分けてそれぞれ合成を試みた。その結果、目的化合物を得るまでには至らなかったが、その合成過程において、新規光学活性オキサゾリン誘導体の合成法を見いだした。光学活性オキサゾリン誘導体は天然シデロフォアにも見られるだけでなく、金属イオンと錯体を形成することで、有用な不斉触媒となることが知られている。そこで、本研究で新規に合成されたオキサゾリン誘導体を用いて触媒反応活性の検討を行ったところ、興味深いことに、一般的なオキサゾリン誘導体を触媒として用いても進行しない反応を促進するだけでなく、得られる生成物の不斉収率も極めて高い(99.9%e.e.以上)、非常に有用な不斉触媒となり得ることが判明した。この新規オキサゾリン誘導体は、オキサゾリン環上にカルボン酸誘導体であるアミド基を有することが特徴的であり、このアミド基が反応基質と水素結合や疎水性相互作用をすることにより、高い不斉触媒活性をもたらしていることが明らかとなった。
All 2004
All Journal Article (1 results)
Inorganic Chemistry 43巻
Pages: 8538-8546