Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
^3Heは1mK程度の超低温で超流動状態になり、異方的なp波クーパー対に起因する多彩な性質を示し、我々がフェルミ粒子対凝縮の普遍的性質を理解する上で欠くことのできない研究対象である。特に、薄膜や壁近傍など、境界の効果の無視できなくなる領域では、秩序変数の抑制効果による新しい超流動相の安定化や、秩序変数の対称性を反映した表面束縛状態の形成などが予想されている。これらの現象は、秩序変数の異方的性質を境界効果により新たに顕在化させたものととらえることができ、バルクの実験では見ることのできない新たな切り口から、異方的超流動の本質を探る研究と言える。しかし、バルクと比べ、極めて限られたサンプル量、サンプル空間での現象であるために、従来の実験方法での進展は困難であった。くし型電極という微細な構造のデバイスの導入により、膜厚1μm以下の薄膜のこれまでにない高度な制御・測定を可能にした。その結果、臨界流密度の膜厚依存性の測定から、流れの散逸機構に秩序変数の抑制が強く関与していることが分かった。また、くし型電極を圧電基板上に配置した弾性表面波素子や、水晶振動子などのずれ振動素子を用いた、数十MHzの周波数でのよこ波音響インピーダンスの測定を行った。この測定は、平行に振動する境界面とそれに接する超流動^3Heとの間の運動量輸送を調べることに相当し、境界近傍に形成される準粒子状態密度の大きな寄与が予想される。その結果、音響インピーダンスの温度依存性は表面束縛状態の寄与を示した理論的予測の特徴を再現しており、超流動^3Heで初めて表面束縛状態を確認した実験となった。
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