Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
広く海洋域で生息するプランクトン・浮遊性有孔虫は、海洋表層から亜表層水の水温や塩分等の水塊の性質にその生息分布を依存する。炭酸塩カルシウムの殻を形成し当時の海洋情報を記録して海底堆積物中に残るため、古海洋学の重要な指標ともなる。しかし、浮遊性有孔虫の生物学的研究は不明な点が多く、特に系統発生については遺伝子レベルの解析に基づく実績は数少ない。本年度では、これまでに採取した西太平洋・亜熱帯域の試料より得た浮遊性有孔虫10形態種50試料について、遺伝子の抽出からポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による増幅し、クローニングの過程を経て、核のSmall Sub-Unit(SSU)rDNAの遺伝子配列を読み取った。本研究では、これらのデータと、すでに大西洋・地中海・東太平洋等の他の海域で得られている同種の配列を比較し、系統樹を構築したことにより、10形態種の各々で形成された単系統群から少なくとも16ハプロタイプ・グループが認められ、それらの大部分の生息範囲は地理的制約を受けていない事が示された。また、16ハプロタイプ・グループの分岐年代を推定し、約14Maと古い分岐年代をもつ3つのcryptic speciesほか、約5〜6Maと2Maに8つのcryptic speciesが分岐する。こうした分岐年代は、地球史においてインドネシア多島海やパナマ地峡の形成といった地形変化のみならず、極域での氷床の発達といった現在の地球環境の基礎を構築した時代によく一致しており、浮遊性有孔虫の進化がそれに伴っていたと推測される。一方で、大部分のハプロタイプ・グループが大洋間をまたいだ生息分布を示すことにより、海洋熱塩大循環系に沿った、太平洋からインド洋を経由して大西洋へ流れる表層〜亜表層水の経路の裏付けになると考えられる。以上のように、海洋循環と生物進化双方の関連性が示唆され、分子系統学と地質学の総合的な成果が得られた。
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