銀行のコーポレート・ガバナンスにおける監督・規制の役割
Project/Area Number |
02J07804
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Civil law
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀田 佳文 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2002 – 2003
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2003)
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Budget Amount *help |
¥1,600,000 (Direct Cost: ¥1,600,000)
Fiscal Year 2003: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2002: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 銀行 / コーポレート・ガバナンス / 監督 / 規制 / 金融機関 |
Research Abstract |
本研究では、わが国における銀行規制のあり方が、事前規制から市場規律を重視した事後規制へとその重心を移しつつあるという現象と、連年の会社法改正による企業経営執行と監視とが分離される方向が打ち出されたという現象の両面に着目し、株式会社組織を採るわが国の銀行経営コントロールにおいて当局による監督規制がどのような役割を果たすべきか、その場合にどのような手法が採られることが望ましいか、また会社法の私法的規律とどのようなバランスを取っていくべきかという問題につき、主にアメリカで行われている議論を参照しつつ検討を行った。 まず、近年アメリカで唱えられている「誘因整合性」という考え方についての議論を紹介した。「誘因整合性」は、必ずしも銀行規制のみに射程を限る議論ではないが、銀行監督規制に即して言えば、銀行の行動(すなわち経営判断)を事前規制によって縛ろうとするのではなく、銀行に一定の行動を取らせるための誘因(インセンティヴ)を与えて政策誘導を行おうとするものである。銀行監督規制が上記のように変容してきた背景には、このような考え方がある。この考え方から、銀行監督規制は事後的・謙抑的であることが望まれることが導かれる。一方、私法的側面からも、アメリカにおいて会計不正を発端に制定されたいわゆる「米国企業改革法」は、ディスクロージャーを梃子に会社のガバナンスを効かせようとするものである。この考え方は、監督法上の誘因整合性アプローチと軌を一にし、経営判断の自由度を増すものである一方、経営判断に対する事後的な規律としてもワークする。この点は、決済機能という特殊性を帯びる銀行においても、一般事業会社と変わるところはない。このように、アメリカにおける市場規律を重視した銀行監督手法は、銀行(ひいては会社)に対する私法的規整とも整合的であるといえる。 これを前提にわが国の銀行法上のコーポレートガバナンスに影響を及ぼす規制の要否やあり方を考察した。結論的には、(1)銀行取締役・株主について、会社法を超える規制を課すものは、市場規律による事後規制が及ばない(あるいは規制が及ぶことを期待しにくい)場合に限り、謙抑的に用いられるべきである、(2)一方、決済機能に影響を及ぼす財務規制なども、間接的にガバナンスに影響を及ぼすが、これらは必要に応じて機動的に発動されるべきであるとの示唆を得た。 本研究はやや抽象度の高い議論が中心となったが、以上の視点を具体的な事案にどう適用していくかを考えていくことが、今後の課題である。
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Report
(2 results)
Research Products
(4 results)