高密度天体内部物質における中性子過剰核の構造と融解の研究
Project/Area Number |
02J07939
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
素粒子・原子核・宇宙線・宇宙物理
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡辺 元太郎 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2002 – 2003
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2003)
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Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 2003: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2002: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 中性子星 / 重力崩壊型超新星 / 核物質 / nuclear"pasta" / 量子分子動力学 / 超新星 / 分子動力学 / Nuclear "Pasta" |
Research Abstract |
中性子星内殻底部並びに超新星コアといった部分では、スパゲッティのような円柱状やラザニアのような板状の原子核(nuclear "pasta")から成る相がエネルギー的に安定な状態として存在しうるという予測が提出されている。しかしながらこの予測は、大半が核の形状を仮定した計算結果に基づくものであった。このような状況の中、本研究は、量子分子動力学法(QMD)という核の形状を全く仮定しないような核子レベルの微視的かつ動的な枠組みによって、果たしてnuclear pastaが動的な過程を通じて形成されうるのかということを解き明かし、もしそれが形成されうるのであればその過程を理解し、加えて、有限温度下でのpasta相の状況をも解明することを目的として、前年度より開始された。私は、本研究での知見によって、最終的には、中性子星内殻や超新星コアの内部についての現実的な描像を提示することを目指して、現在まで研究活動に励んできた。 本研究は、QMDシミュレーションのコードそのものの作成から始まり、前年度中に一様な核物質からnuclear pastaの全ての相が動的な過種を通じて発現しうることを他のグループに先駆けて示すことに成功した。今年度は、その先駆的な結果をもとに本研究をより完成度の高いものにするべく、宇宙物理的に興味深い中性子過剰や有限温度の領域でのpasta相の研究に取り組んだ。その結果、これらの領域でのpasta相の相図を得ることに成功したが、特に温度-密度平面でのpasta相の相図の全貌は本研究によって初めて明かされたという意味で特筆に価する。得られた相図によると、約3MeVの温度までpasta相が融解せずにその構造を保持していることがわかったが、このことは、重力崩壊の初期段階における超新星内部コア中にpasta相が存在することを強く示唆するものである。また我々は、電子遮蔽がpasta相の相図に及ばす効果を明らかにした。 動的な枠組みでのnuclear pastaの再現は,私の知る限り本研究が初めてであり、本研究は今後のpast相研究の新たな側面を切り拓いたといえる。即ち、本研究で得られた成果により、さらに興味深いテーマへのアプローチが可能になった。例えば、我々は既に、圧縮および減圧によるpasta相間の構造転移の問題に着手しているが、このシンプルながらも非自明な問題は、核の形状の大きな変化を伴うため、動的な枠組みによるpasta相の再現が達成された現時点だからこそ解決可能となったといえる。この様な事実は、本研究が高密度天体内部の理解に少なからず寄与していることを如実に物語っている。
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Report
(2 results)
Research Products
(11 results)