Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本年度は主に以下の二点に関して研究を行った。1.寛正6(1465)年の奥書を持つ尊経閣文庫所蔵の抄物資料『論語講義筆記』は、時代の口語をよく反映しており、日本語史研究資料として価値の高いものである。この『論語講義筆記』を精査したところ、抄物資料に特徴的に見えるとされる逆接の接続詞アレドモが本資料では後半部に偏って見られることがわかった。これは、抄物の文体と接続詞とが密接に関わっていることを示しており、『論語講義筆記』はそのような抄物としての文体を整えようとする様子を窺うことのできる貴重な資料であることが明らかとなった。(以上の内容は、『文献探究』誌にて雑誌論文として公表した)2.現代語で「〜せねばならない」等で表される当為表現形式に関する先行研究は、近世中期以降のものに限られる。私はこれまでの研究で、狂言資料をもとにして室町〜近世初期、またそれ以前の当為表現形式の様相を探ってきたのであるが、その中で「イデカナハヌ」から「ネバナラヌ」への形式交替が生じたことを明らかにした。さらには、今年度の研究により、当該時期における旧形式「イデカナハヌ」と新形式「ネバナラヌ」との比較対象により以下のような仮説を立てた。「二重否定の当為表現形式が新出する場合、まずは「主観的把握」用法として用いられ始め、衰退期には「客観的規制」用法として残る」この仮説は現代語の当為表現に関わる諸形式にも適用できると考えられる。現代語における立証は今後の研究で明らかにしてゆく予定である。(以上の内容は、第200回筑紫国語学談話会にて口頭発表を行った)
All 2004 Other
All Journal Article (1 results) Publications (3 results)
文献探究 42号
Pages: 108-117