放射光を用いた1分子計測法は生体分子内運動を可視化する
Project/Area Number |
02J11108
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Biophysics
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
奥村 泰章 信州大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2002 – 2003
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2003)
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Budget Amount *help |
¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
Fiscal Year 2003: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2002: ¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
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Keywords | 1分子計測 / X線回析 / ナノ結晶 / 生物物理学 / 膜蛋白質 / X線1分子計測法 / 放射光 / 多層膜ナノ結晶 / 膜タンパク質 / DXT |
Research Abstract |
生体分子の機能を正確に理解するためには、個々の生体分子が有する動的な構造変化をリアルタイム計測することが不可欠である。そこで近年、これら計測を実現するために放射光を利用したX線1分子計測法が考案された。本研究では、新規計測法であるX線1分子計測法(Diffracted X-ray Tracking:DXT)の原理実験、高度化、そして更なる応用研究を行ってきた。 本研究の成果は、まずDXT実現のためのキーテクノロジーであるナノ結晶の作製に成功した点である。従来とは全く異なる手法を用い、直径約15-25nmの2種類の異なるナノ結晶(Mo/Si多層膜ナノ粒子、及びAuナノ結晶)の作製に成功した。 そして、これらナノ結晶を用い、基板上に孤立させた各種蛋白質(DNA,ミオシン、アクチン等)1分子の動的な構造情報を検出しただけでなく、更には定常的解析が難しいとされる膜蛋白質を用いたDXT測定の実現にも成功した。特に、Bacteriorhodopsinにおいては、35アミノ酸残基において、BR状態からM中間体への構造変化が14.6±9.7mrad(0.73±0.48Å)であることを検出した。この値は、X線結晶構造解析により得られた値と非常によく一致する結果であった。本研究では、DXTが膜蛋白質においても高精度な計測が可能であることを実証すると共に、細胞システム内でのDXT1分子計測実現に向けた大きな一歩を示した。 更に、DXTを用いて生体分子の光熱変換過程における特異な分子振動現象を捕らえることに成功した。本研究の更なる進展は、生体分子の光熱変換過程の詳細を明らかにするだけでなく、生体分子の光励起後のエネルギーの流れの素過程を解明、更にはより効率的に光を利用した人工生体分子の創製も可能になると予想される。 本研究を通して可視化された蛋白質の分子内運動は、ごく僅かでしかない。しかし本研究を通して得られた成果は、生命科学が進展し分子内運動の可視化が当たり前となる未来へ向けた大きな一歩である。
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Report
(2 results)
Research Products
(7 results)