Research Abstract |
高温超伝導体は二次元的なCuO_2面を持っている。CuO_2面が電気伝導を担い,常伝導状態ではそれに垂直方向方向(c軸方向)は絶縁体的な振る舞いを示す。一方,超伝導状態になると,C軸方向にジョセフソン結合することにより,C軸方向にもキャリアのコヒーレントな運動が可能となる。最も簡素な構造を持ち,かつ比較的低い転移温度を持つ高温超伝導体であるLa_<2-x>Sr_xCuO_4とSmLa1_<-x>Sr_xCuO_<4-δ>のTSFZ法による単結晶作成作成及び,赤外分光器Bruker(20〜4000cm^<-1>)やsubmmメーター分光器(5〜40cm^<-1>)を用いて面内及び面間の光学反射率測定を行った。これらの物質は,今まで,結晶中に小さなグレインが混ざったり,単一ドメインの良質な結晶を得ることが難しく,光学反射率測定において,面内のスペクトルにおいては,絶縁体的な面間(C軸)スペクトルが混じり,面内固有の定量性のある実験結果を得ることが困難とされていた。最近になって,単結晶作成の技術的向上により,非常に均一な良質の単結晶が得られるようになり,面内のスペクトルにおいても定量的な議論が可能な試料が得られるようになった。一方,測定技術においては,従来のフーリエ型赤外分光器では,測定領域外の,低エネルギー領域までをカバーする分光器を最近になって,Stuttgart大学のDresselグループが開発した。このように,本研究の最大の特徴としては,良質の単結晶を用いて,高いエネルギー領域の測定を行ったのみならず,従来では測定できなかった低エネルギーの光学反射率測定までを行ったことである。このことにより,従来では検出できなかったこれらの物質の面内の超伝導応答が,30〜40cm^<-1>という非常に低いエネルギー領域に抑制されていることが明らかになった。このことからこれらのスペクトルから超伝導凝縮成分を定量的に見積もって,μSRやマイクロ波といった実験方法から得られた実験結果とつき合わせて議論することが可能となり,高温超伝導体の超伝導状態での面内の電子状態に対する知見・理解がさらに深まったといえよう。 また面内(c軸)の光学反射率スペクトルに関しては,すでに論文(PRL86,4140(2001))で発表している内容に加え,組成依存性を定量的に調べ,理論的に予想されているCuO_2面に電荷が帯電することによるジョセフソンプラズマの強い抑制(帯電効果)の是非について検証した。その結果,これらの理論から期待される二次元の電荷圧縮率0.25に近い値が,実験結果からも得られ,その理論が妥当であることが実験結果から明らかになった。 これらの結果は,秋・春の日本物理学会で報告し,現在,雑誌に投稿すべく,実験結果のまとめ等を行っている。
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