Research Abstract |
当初,計画していた研究のうち,理論的な検討以外はほぼ所期の成果を挙げることができた.さらに計画外の課題についても取り組み,いくつかの興味ある結果が得られた. (1)霧の自動観測装置の開発は予定より2ケ月ほど遅れたものの,期待していた性能のものを作成できた.この装置による観測を昨年10月初めから三次盆地で開始し,現在まで順調にデ-タを得ている.早朝から昼頃までの時間帯における霧のダイナミックな実態が鮮明な画像で得られている.これによって霧の発生の有無のほか,霧の濃さや形態,動き,消滅までの変化などについてかなり詳細な解析が可能であることが分かった.観測は最低1年間は継続し,デ-タの蓄積を図るとともに,霧現象の季節変化についても調べる予定である. (2)霧発生の変動性について,日本道路公団の中国および山陽自動車道のパトロ-ル記録と気象条件から霧発生を判定し,自動車道沿線地域の霧発生の季節変化,地域性などについて調べた.その結果,発生の季節変化には地域差はないものの,発生日数には大きな違いのあることが分かった. (3)霧発生と気象条件との関連性およびそれに基づく霧発生予測の研究を三次盆地を対象として行った.関与する気象要因として一般場・上層場の条件が基本的であると考え,判別分析法を適用した結果,季節によって予定要因が異なることや,予測要因のデ-タに気象庁の数値予報デ-タを用いた場合,秋は80%,冬は89%という高い的中率が得られることが分かった. (4)三次盆地と地形的特徴の異なる2つの盆地で比較のための観測を行った.その結果,峡谷地形の盆地(加計町)では霧は最初,中空から発生するという興味深い事実が見出された.これに対し,平坦地形の盆地(東広島市)では盆地を取り囲む山々の山麓や山腹で発生する傾向のあることが分かった.霧の発生の仕方が盆地地形によって異なるという事実は,霧の実態や機構に関して新たな課題を投げ掛けるものだと考えられる.
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