Research Abstract |
ラット肝初代培養細胞にニュ-スカッスル病ウィルス(NDV)を感染させ増殖させることにより,NDVの感関モデル実験を行うことができる。NDVには全身性感染をおこす強毒株であるミヤデラのようなものと,ニワトリ受精卵尿膜などの特定の細胞の特定の部位にしか感染しない弱毒株D26がある。NDVが感染するためにはその外膜に結合しているFタンパク質が宿主細胞膜と結合して膜融合をおこし,ウィルス遣伝子を宿主細胞に導入する。しかし,Fタンパクは宿主細胞で膜融合を持たない前駆体タンパクF。として生合成され,宿主細胞内のプロセシングプロテア-ゼにより活性化されてF_1+F_2となり膜融合能を獲得する。我々は ^<35>Sメチオニンで標識したF_0が初代培養肝細胞中で活性化されること,またモネンシンの添加によりその活性化が抑制されることから,F_0プロセシング活性がトランスゴルジ領域に存在することを示した。更に,プロセシングプロテア-ゼはCa依存性であることを明らかにした。 次にラット肝よりトランスゴルジ膜を精製し,膜標品を用いてF_0プロセシングプロテア-ゼの性質を調べた。プロテア-ゼ阻害剤では,EDTA,PCMB,HgCl_2が阻害するが,PMSF,Eー64,ペプスタチン,Nエチルマレイミド,ロイペプチン,フォスフォラミドンでは全く阻害されなかった。反応の至適pHは6〜8と広く,pH5以下では殆ど反応しなかった。トランスゴルジ膜はNDVー強毒株をプロセスしたが弱毒株は全くプロセスしなかった。プロセシング活性はIMーNaClで膜を洗っても溶出されなかったが,0.6%Chapsを含む緩衝液で抽出されたので膜結合タンパク質と考えられる。 以上の結果から,エンベロ-プを有するウィルスの感染の重要なFタンパクの膜融合活性は,宿主細胞のトランスゴルジ膜結合エンドプロテア-ゼの作用によることを明らかにした。
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