Research Abstract |
ボロン(B),炭素(C),窒素(N)の化合物は,合成法によりグラファイトやダイヤモンドの構造形態を有する.それ故,グラファイト特有の低摩擦力の発生とダイヤモンド特有の硬質材料としての耐摩耗性が期待されている.このような背景に基づき,本研究はイオンビームミキシング装置を用いてBCNコーティングの成膜を行い,様々な相手材料及び種々の環境下におけるトライボロジー特性を整理したデータベースを構築するとともにトライボ材料としてのBCNコーティングの実用化の指針を得る事を目的としている. 1年目の本年は,成膜されるBCNコーティングの表面粗さとナノ硬さに及ぼす成膜条件(成膜時の加速電流,加速電圧,成膜速度を変化させた20組の成膜条件)の影響を実験的に明らかにし,実用上有益なBCNコーティングのための成膜条件を明らかにする. 具体的には,イオンビームミキシシグ装置を用いてシリコンウエハ上に20組の成膜条件(加速電流密度,加速電圧,成膜速度)でBCNの成膜を行ないナノインデンタ及びAFMを用いて被膜のナノ硬度と表面粗さの測定を行った. その結果,成膜速度の増加に伴いBCNコーティングの表面粗さが増加し,ナノ硬さが減少する事が明らかにされた.さらに,加速電庄の値により形成されるBCNコーティングのナノ硬さに及ばずイオン電流密度の影響が変化することを実験的に明らかにした. 具体的には,1.0kVの加速電庄を用いた場合,形成されるBCNコーティングのナノ硬さは,加速電流密度の増加に伴い増加し,1.5kVの加速電圧を用いた場合,形成されるBCNコーティングのナノ硬さは,加速電流密度の増加に伴い減少する事が明らかにされた. 本実験の結果,加速電圧2.0kV,加速電流密度60μA/cm^2,成膜速度5Å/sの条件において最も高い硬度(104.87Gpa)を有するBCN膜が形成された.
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