Budget Amount *help |
¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2004: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Research Abstract |
近年のがん研究はより広範で多様な分子種を包含し,従来は生命現象の一部と考えられていた分子群をも細胞形質転換やがん化に関わる分子として認識するようになってきた。このような動向に鑑み,本研究はこれら複数の新規がん関連分子を大腸がん病態との関連から解析し,発がん・進展の分子機構に迫ることを目的とする. β-カテニンの特異的活性化・制御の分子機構を解明するために,細胞内におけるβ-カテニンの生理的発現やがん化シグナルの活性化機構に関与する可能性のある分子を個別的に対象にして,大腸癌における発現や動態をβ-カテニンの活性化パターンと比較検討した.laser capture microdisectionによる解析の結果,β-カテニンの腫瘍浸潤先進部における特異的活性化がAPCがん抑制遺伝子の不活化に依存しないことが解った.ついで,大腸発がん・進展過程に関与する遺伝子のうちこのがん化シグナルとの関連が想定されるp53やrasとの関連性を調べた.その結果,β-カテニン活性化はp53がん抑制シグナル不活化やrasがん化シグナル活性化とは明らかな交差応答を示さなかった.一方,約80%大腸癌ではβ-カテニンとrasのいずれかのがん化シグナルが活性化され,両者が同時に活性化されている腫瘍は悪性度が高く,転移や再発が高率であったことから,β-カテニンとrasの組合せ解析は大腸癌の分子診断に有用であると結論された.β-カテニンがん化シグナル制御の本質はユビキチンシステムに起因する.我々が同定したβ-TrCP(E3ユビキチンリガーゼ受容体)はβ-カテニンシグナル依存的に誘導され,β-カテニンとともにIkBαをユビキチン化分解することによりNF-κBシグナルを誘導することを報告してきた.この成果に基づいて,大腸癌病態におけるβ-カテニンのユビキチン化分解システムの関与を明らかにする目的で,切除大腸癌を対象にβ-TrCPの発現(mRNA,蛋白)と局在を解析し,β-カテニンやNF-κBの活性化,アポトーシス,がん病態との関連について検討した.その結果,β-TrCPはβ-カテニンがん化シグナルおよびNF-κB細胞生存シグナルを同調させることにより,大腸癌の進行と悪性度や臨床病態に重要な影響を及ぼすことが明らかとなった. 一連の成果は大腸発がん・進展機構の解明,悪性度・予後などのがん病態の分子診断や,このがん化シグナルの制御・転写因子を標的にした分子治療法開発のための分子基盤となることが期待される.
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