Project/Area Number |
03J01236
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
東洋史
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Research Institution | The Toyo Bunko (2004) Chuo University (2003) |
Principal Investigator |
五十嵐 大介 社団法人東洋文庫, 研究部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2003 – 2004
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2004)
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Budget Amount *help |
¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2004: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 2003: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
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Keywords | 中世史 / イスラーム / マムルーク朝 / 土地制度 / 財政史 / 寄進 / エジプト:シリア / アラブ / イスラム / イクター制 / 制度史 |
Research Abstract |
1 論文「後期マムルーク朝におけるムフラド庁の設立と展開」(『史学雑誌』113/11)では、後期マムルーク朝(1382-1517)初めに創設された、スルターン直属のマムルーク軍団への支給業務を管轄する財政組織「ムフラド庁(al-Diwan al-Mufrad:独立官庁)」が時代とともに拡大していく過程に注目した。それにより、(1)前期マムルーク朝末期以降、有力軍人層によるイクターの私有化と国有地の占有、ワクフ(寄進)の増加による国有地の侵食という、土地制度上の変化によって、国家による農地の一元的な掌握が崩れていったこと、(2)その結果イクター分与と直轄地収入を二本の柱として成り立っていた従来の国家体制が変容を余儀なくされたこと、(3)ムフラド庁とは、かかる状況の中で限られていった国家最大の収入源=農地を、マムルーク軍人の維持養成と彼らによる支配体制を維持するために集約する制度であったことを明らかにした。 2 論文「後期マムルーク朝スルターンの私財とワクフ:バルクークの事例」(『オリエント』47/2)は、2003年にカイロで実施したワクフ文書調査の成果である。後期マムルーク朝の初代スルターンが当事者として関与している文書の分析から、彼の私財獲得やワクフ設定を通じた資産形成の実態を明らかにした。この報告では、(1)後期マムルーク朝成立期より、スルターンはワクフ制度を個人的な経済基盤を確保するための手段としていたこと、(2)そのために国庫財産がスルタンによって自身のワクフに流用されていたこと、(3)その結果既存の行財政機構が機能不全に陥り、スルターンにとって個人の財源の確保は国家の運営上も必要不可欠になっていったこと、(4)しかしこうした資産はスルターンの没後、子孫に継承され一族のもとに留まる「家産」とはならず、国庫に戻されたり、有力軍人が管財人を務めるようになったことを明らかにした。
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