Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
これまでに、アブラナ科植物の自家不和合性反応が、花粉表層に存在するSP11(塩基性低分子量蛋白質)と柱頭細胞膜上に存在する自己のSRK(受容体型キナーゼ)との特異的な結合によって引き起こされることを明らかにしてきた。また、SP11結合に伴いSRKの自己リン酸化レベルが上昇することを見いだしている。従って、SRKも動物のreceptorキナーゼ同様、リガンド結合による自己リン酸化レベルの上昇によりキナーゼ活性が活性化し、更に下流へシグナルを伝達するものと考えられる。そこで本年度は、SRKの活性化機構を明らかにするため、SRKの自己リン酸化部位の同定を行った。柱頭上のSRKの存在量は大変少ないため、自己リン酸化部位の同定は大変困難であることが予想された。そこでまず、大腸菌によるSRKキナーゼドメインの組み換え蛋白質を作製し、この組み換え蛋白質における自己リン酸化部位について解析を行った。組換え蛋白質は、SDS-PAGEにより泳動分離した後に、トリプシンによるゲル内消化に供した。この消化物を質量分析器LC-MS/MS (nanoLC-ESI-Q-TOF MS)により分析することで、リン酸化部位の同定を行った。リン酸化ペプチドの同定は、非リン酸化ペプチドに対するリン酸化ペプチドの割合が低くかった為、IMACを用いたリン酸化ペプチド濃縮法などの前処理を組み合わせて行った。その結果、SRK8及びSRK9のキナーゼドメインについて合計13箇所のリン酸化部位を同定することができた。そこで、幾つかのリン酸化部位について、抗リン酸化ペプチド抗体を作製したところ、リン酸化特異的に反応する抗体を得ることができた。現在、これらの抗体を用いて柱頭細胞膜上のSRKの自己リン酸化レベルについて解析を行っている。